広島自治体問題研究所
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2022年3月号読者ノート

 (2022/02/23)
 
編集者から
 博物館法改正の動きが表面化し公立博物館(美術館を含む)が岐路に立っています。
 公立博物館は、「国民の教育、学術及び文化の発展に寄与する事を目的」として戦後の社会教育法体系に位置付けられました。
 いま公立博物館は、「観光立国」政策の下、「文化観光拠点施設」へと変えられようとしています。地域に密着した市民とともに歩む取り組みに学び、これからの公立博物館のあり方を考えます。

目次
◆直言 差別発言をのりこえ多様性が生きる社会へ 額賀和子

 「LGBT」が議会の中で区を滅ぼすとの発言がされると、この議員に対する異議がSNSで広く明らかになって行くことの時代的背景が述べられています。議会という場の在り方が、多くの区民に関心を深め土壌を成長させてきたのでしょう。靖国派と言われる議員がなりを潜める時代になったのか、この急成長を振り返ると多くの多様性を生んできた文化が、区に培われてきた成果だったのですね。
●連続企画● 「新型コロナ」から日本の社会を考える 第21 回 市民の健康度を高めよう─新型コロナ感染症を抑え込みこれを機会に公衆衛生の機能強化を 長島芳昭
 2020年2月4日、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客から新型コロナが検出され、新型コロナウイルス感染症は今や国内に大きな災いを生んでいます。
 この対策が、これからどう作られていくのがいいのか、
 公衆衛生の進化と衰退
 そしてこれから作る課題 が整理されています。
「強い兵隊」を作るために国民体力法が制定され、
 敗戦後の国民生活脆弱・貧困・不安な生活からの脱却のため保健所法が作られ、乳幼児健診母子健康手帳が市町村に一元化されました。
一方新自由主義の広がりから、保健所の地位は、崩され、地域保健法に保健所長までが民間に下ろされてきました。
  こういう時に、今回の新型コロナが発生し、多くの犠牲者が作られています。これからの公衆衛生機能強化を実現するためにどうすべきか。
     1.原則 
   2、具体的な展開 
   3、市民生活の感覚に依存して健康度を高める 
   の項目が述べられています。
 実際の保健所に配置されている業種(衛生監視・食品衛生・環境衛生・医務・薬務等を分担し、採用職種は、獣医・薬剤師・検査技師・理学系、食品関係です)の多さに改めてその大事さが分かります。
 個人の症状も大切であり、その人を育てている環境に目をやる人の構成も保健所なのですね。その所長は剣客でなければいけないのです。

●特集● 博物館法改正の論点と市民と共に歩む公立博物館
 
博物館法の改正23年4月1日施行となる。
文化審議会答申と博物館法改正問題─市民の学びの自由と権利を保障する博物館の自由をめぐって 長澤成次
 博物館法は、1951年12月㏠公布・1952年㋂1日の施行から70年が経過しています。単独での改正は、今回2回目となるもので、憲法・教育基本法のもと、社会教育法の精神に基づき制定されてきました。
 したがって基本的人権としての思想・良心の自由、表現の自由、学問の自由などの自由権的諸権利と「教育を受ける権利」「(学習権)などの社会権的権利は、社会教育機関としての博物館においても十分に保障されなければなりません。
 しかし、新自由主義の広がりの中で、教育委員会制度・首長部局移管・地方分権一括法などとの関連の中、不安項目があげられています。今回挙げられて文化観光推進法との軋轢は如何に解決されるのでしょうか、これらについて押さえておきましょう。
  1.「文化観光」概念の導入によって観光が目的とされて文化が手段化される危惧
  2.「文化観光拠点施設」へと「機能強化」され、「収集・保管、展示・教育、調査・研究の基本的機能」が後景に退いてしまう危惧
  3.事業展開が、博物館の自由で自律的な学芸活動を阻害する危惧
 付帯決議が付いた文化観光推進法の問題点、「満足度」「来訪者数」「リピーター率」などKPCAサイクルのもとで、博物館・美術館等の事業が展開されることの違和感が述べられています。
そして、博物館法の根幹に関わる第1条・目的が変更される可能性があるのです

会員相互が教え学び合う─平塚市博物館の取り組み 浜野達也
 平塚市は6分野に学芸員が配置された、総合博物館・考古・歴史・民俗・地質・天文学が「地域の再発見」という活動方針のもと連携しているのですね。
 まさに主権者市民を巻き込んだ活動なのです。
その特徴は、
  ・行事の結果を出版物や展示という形であるものにまとめ、行事が館の財産として生きていく仕組みを作っている、
  ・行事は参加した市民が調査・研究・収集・保管・展示・普及という博物館のあらゆる機能に関わる活動を目指して取り組んできたことです。
  ・まさに多くの会が出来ており、
 ここでは「石物を調べる会」が紹介されていますが、長年の活動履歴が記載されており、参考にしてください。
  年に一度の温泉旅行がカギですね。
 令和3年版平塚市行政概要で、人口257,504人、博物館概要から主な教育普及活動25分野、開催回数120回と参加者数1,728人と報告されていました。

町田市立自由民権資料館のとりくみ─町田自由民権カレッジの実践を通して 松崎 稔
 その街で起きた市民の要求にどうこたえていくか、町田市の博物館の生まれ方は、町田市の市の対応として自由民権運動に対する認識が、大きくかかわっていたように思います、
 「町田自由民権カレッジ」の実践の特徴が
   第一に卒業生が専門性を高め、講師を務めるまでに成長している。
   第2に、自主学習組織で現在も活動を続けている
   第3に多くの市民に活用されることが新たな一歩なると考えられた知識や知恵を効率良く習得することに
  偏重しつつある風潮に対して、より深く学び考えたい、自分で調べ解決するもしくは考える力を養いたいという要求が、博物館の発足にあたっての市民のニードをどうとらえるかが大きな課題ですね。
 また、多様な学び方のニーズにどのようなカリキュラムを改編するかなど当初の目的を失わないで考えることが必要ですね。

宮城県 リアス・アーク美術館 教育施設であることへのこだわりについて 山内宏泰
 この宮城県リアス・アート美術館が、運営母体が気仙沼市と南三陸町で構成される気仙沼・本吉地域広域行政事務組合の教育委員会だと。
 2011年の東日本大震災に被災した後も、全事業が再開しているのです。
 1990年当時、「海の文化資料館」という目的で設置計画が立ち上がり、その後「美術館」へと目的が途中変更され、美術館でありながら地域の歴史、民俗、生活文化系資料の常設展示を持つ変則的な施設としてオープンしています。開館と同時に「税金の無駄遣いをする厄介者、裏切り者」といったレッテルを張られることになったそうです。それゆえ、学芸員のミッションは、地域密着型施設と信用を得ることにつくと言います。
 地域に密着した事業を継続させ、地域住民参加型の文化祭を開催する教育普及事業として、「出前授業」と銘打って訪問型の事業をするなど多様性を備えた博物館になっています。
 そもそも「学芸員」という中身は、何の為に必要なのか、
  どういった仕事をし、
  何が出来るのか が綴られています。
  自信をもって地域密着型博物館施設を名乗れる理由、
    それは美術館を出て、地域住民とともにまちをつくる、その活動にエネルギーを注いだ結果と言えます。
  「同じ現場で、同じ目標に向かって活動する仲間として価値観を共有する」、それ以上に分かりやすい地域密着はないと言っています。
  教育施設であるということは、その務めは「学びの機会の提供」である。あることで地域住民の20%が理解していて80%は理解できていない状態ならば、理解していない80%のために学びの機会を提供する、それが教育施設の務めだと。昨今、多くの文化施設が娯楽目的の商業的な展覧会等を盛んに催しています。そういった施設と混同されることで、博物館は社会施設であるとの認識が、一般に相当低下してしまっています。
   また同時に学芸員が教育職にあたる専門家であるとの認識も見失われています。
   教育者であるがゆえに、学芸員は地域に寄り添い、地域の過去、現在、未来を考え、地域の発展と安定を願い、厳しいこともいい嫌われることも覚悟しなければなりません その覚悟がなければ、地域密着などと語ってはいけないのです。

美術館活動に市民はどう参画できるか─和歌山県立近代美術館の場合 青木加苗
 夏休みの美術館はコレクションによる展覧会であるため、実際に出品予定の作品をみんなで直接見る機会を設けることが出来るのです。展覧会の内容そのものに影響を与えることも珍しくなく、展覧会企画自体に、研究会活動が大きく関わっていきます。
 美術館は人々の学びの場を「提供」しているのではなく、
 美術館を「自分ごと」として考える市民によって支えられているのだという事実があるのです。
 美術作品を多様に見ることが、美術の楽しみへの入り口だと位置づける「なつやすみの美術館」では、美術史的な解説は一旦傍に置いて、来館者の疑問や自由な解釈をより歓迎しているのです。
 「美術館を市民に開く」とは、美術館を市民や子供たちの作品発表会場所に使うことだと思われます。
 しかし、美術館とは単なる展示会場ではなく、調査研究・収集保存・展示公開・教育普及問一連の活動が有機的につながることで、地域の文化や人々の知的。同型的な営みをその地域内だけでなく外にも、そして過去から未来へと伝えて行くための存在です。
  美術館における市民共同の可能性は、美術に関心がある人のためだけでなく、美術や美術館に関心を持つ市民を増やす活動を行い、そこに様々なレベルで関われる学びの場を設けることが、美術館の存在を安定的につないでいくための心強い支えになりますね。

2022年度政府予算案と今後の地方財政の焦点─アフター・コロナの自治体財政─ 森 裕之
  2022年度政府予算は
   コロナ禍に対応した運営が行われました。端的に言えば、緊急事態に対処するために膨大な財政支出が進められました。そのための国による財源措置も慰霊づくめでした。これは平時における緊縮財政ベースの運営とは全く異なった事態と言えます。
  これに対して、
     1.五里霧中の行財政運営 
     2.財政運営指針としての「骨太方針」  
     3.2022年度政府予算案と地方財政 
     4.これからどうなっていくか、どうするべきか
     補論:財政危機と市民運動―最近の堺市の事例― 
  の角度から述べられています。
 注目すべき点として、
 ・自治体の総常勤職員数の変化です。1994年には3328万2492人をピークにほぼ一貫して減少し、2018年には273万6860人にまで下がり、それ以降は増加へと転じていますが、それでもコロナ禍真っ只中の2021年5月1日時点でさえ280万661人にまでしか回復していない。
 国は次々と新しい政策課題を加えていき、それらを実施することに膨大な資源を投入してきました。それは、地方版総合戦略(地方創生)国土強靭か地域計画をはじめ新しい計画や条例を絶えず策定させられることになり、おまけに流行のPDCAサイクルやKPI (客観的な重要業績評価指標)の設定などの「科学的」なマネジメントを進めることが求められました。
  今後コロナ禍が収束すれば、さらに自治体のデジタル化やグリーン化が強力に要請されもはや現場では限界を超えて来るのは間違いないでしょう。
  また「骨太方針2021」の項目は全部自治体の行財政運営と関連していると言えます。
  第1は、デジタル化です。
  第2はデジタル化やグリーン化(環境・エネルギー)と密接に関係しているもので、いわゆるスマートシティの推進です。
  第3は、生産性を高める社会資本整備です具体的には集約・廃止を含めた公共施設等の適正化を図り、公共施設等総合計画・個別計画の見直しを促進するという点にあります。
  これまで人口20万人未満の自治体への優先的検討規定の導入を要請するとしています。
  第4が、地方創生の加速です。
 
  公共事業については前年度並みの予算確保が行われ、その中でドローン点検を活用した老朽化対策や土地利用規制・避難計画等を強化した防災・減災対策への重点化が図られています。
  国際的に、為替相場がさらに円安へと傾いていくことになり、円安になれば食糧やエネルギーなどの輸入物価が上がることになり、所得が一向に上がらない国民の生活困難がさらに広がりいわゆるスタグレーションが起こり円安が進んで国内の預金等が減ると、円の供給が減少して金利が上がる状況が発生します。そうなれば、政府の債務利払いも大きくなり、財政運営がさらに難しくなることが想定されます。
  財務省の方針を最も体現しているのは、財政制度等審議会が発する「予算の編成等に関する建議」です。地方財政の歳出抑制を図るため、「建議」では使用実績を踏まえた地方財政計画への財源形状の適正化や不用額の精算、社会保障費の効率化、公共施設等の縮減、民間資金・サービスの活用を求めています。
 災害リスクと関連させつつ、居住人口がさらに減少するような立地適正化計画の目標を設定すべきことも提言しています。ただしこれは災害対策というよりも、財政削減の視点から出されているものです。
 これからの自治体は、財政破綻(赤字財政)を避ける事を前提として、自分たちの地域の経済社会にとって必要となる事業やサービスを推し進めていくことです。そのためには、国が設定する重要課題や財源措置を巧みに利用していくことが必要です。それは思想信条はともかくとして、国が提示する補助制度や地方交付税措置の仕組みと内容をきちんと理解して、それを各自治体の財政と行政サービスのために活用することです。
  地域での優れた実践が国全体を動かすという点では、これまでの歴史が証明してきたことです。ぜひそのような視座に立って、2022年度からの行財政運営に取り組んでください。
  大阪堺市は2021年2月に「堺市財政危機宣言」を出し、それに基づいて「財政危機脱却プラン」を押し進めようとしています。これは要するに歳出を見直して削減していくという計画です。
  財政運営の内容を決めるのは最終的は市民です。今後も厳しい財政運営が進むのであれば、それを市民学習を通じた広範な社会運動へと展開していき、財政を真に市民の手に取り戻してほしいと思います。

●連載●
人つながるK 「てま里」へおいでよ!─自分たちの居場所は自分たちの手で 井上可奈子

 里にあるちょっとした居酒屋か、そこでの出会いがスムースに行われる限り、大きな拠点として人が集まるでしょう。社団法人として性格が明確で、町からの支援もあって、ちょっと泊まることが出来るのかなと、関心がもたれます。今なら8500円で泊まれます。
https://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g1121370-d17542752-Reviews-Temari-Nanbu_cho_Saihaku_gun_Tottori_Prefecture_Chugoku.html

公立美術館の光と影 第5回 「表現の自由」はなぜ制約されるのか 武居利史
 表現の自由を勝ち取る戦いで、公立美術館で多くの調整が起こると言われています。多額な開催費用の負担が、この自由を奪っているからです。この自由がこれからもっと大きくなり、誰もが楽しめる文化教養の場にしてほしいものです。眼を開き見守っていきましょう。
シリーズ 地域発信 野草と歩む つちころび野起き 第1回 摘み草のお店「つちころび」 鶴岡舞子
 野草とは何か、あちこちに雑然と生えているものか、どうしても限られた土地にしか生えないⅯ歩の家、私はの草を積んで遊ぶなどしたことがアリマせんが、改めて除くと蜂に刺されたり蝶の子どもの糞にあったり、社会的薬草だとはなかなか思いもつきません。改めて見つめ直してみたい野草です。
くらしと自治と憲法と 第10 回  憲法9条 戦争放棄・国家非武装をめぐって─安倍改憲策動を封じても岸田壊憲が進む 大内要三
 拳法9条がもはや世界から看板倒れになったのは、イラク戦争に加担して以降です。安倍内閣が長期に続きはしましたが、改憲までできなかった、しかし、岸内閣は発足と同時に、憲法改悪を宣言し、議席数でも安定した体制を維持しています。自衛隊がどんな役割をしているのか、改めて私たちは告発しなければいけないのです。軍事同盟が今回のウクライナでの大きな分かれ目として挙がっています。日米安保同盟が私たちの主権を脅かい、敵を同じくする者が結んでともに戦う約束をしているのですから、今新たな自衛隊基地増設が石垣島周辺で広がっていますが、危険な事態であることは、今回国民は知らなければならないと思います。岩国基地での海兵隊員のストレスは、大変なものがあり、この影響が周辺都市に波及していることを告発しな変えればなりません。岸田の提案ある敵基地破壊の軍事予算は国民一人6万円弱になっていることも合わせ、確認したいことですね。
@NEWS リバティおおさかのいま 吉村智博w
BOOK REVIEW
ローカル・ネットワーク
Jつうしん

 今月号に広島自治研からの報告が載っています。県政白書での作業が掲載されていますので読んでください。
自治の風─東京・多摩から 第5回  戦争遺跡多摩火工廠≠ニその後の変遷を追って〜多摩市平和展を軸にした市民の取り組み 神子島 健
 多摩の大地に米軍事基地関係のレクレーション基地が長年潜んでいることが書かれています。都民のためでなく米軍関係者だけが使用できるのです。又この地は戦中の軍事基地として市民を圧迫した施設でもありこれらの告発が、3冊の本としてまとめ上げられている、それも行政が入っているとは、改めて勉強したいものです
編集後記
 

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