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2022年8月号読者ノート

 (2022/07/29)
 
編集局より
 2013(平成25)年12月4日に施行された交通政策基本法では、交通に対する基本的需要の充足が重要であるという認識のもと、基本理念に対する国・地方公共団体・交通関連事業者及び交通施設管理者それぞれの責務を定めています。住民が好きな時に好きなところに行く権利を保障することを考えた時に、国と自治体と、日頃からその恩恵にあずかる住民自身はどのように向き合うべきでしょうか。
目次
◆直言 「財政危機」に備える  森 裕之

 コロナ禍で国の財政出動が大きく変わっています。円安の陰で、円の価値が下がり外国人労働者の確保が難しくなる、そうなれば国は再び財政引き締めに舵をきらざるを得なくなる。その最大のターゲットが地方財政にほかならないというのです。自治体への地方交付税の支出を下げて、国民生活に使う金が少なくなるのです。地方自治体は「赤字にならない」ことを最大限務め、財政破綻の警告としています。財政危機に直面した自治体のできる主な手段は、法定外税を作るなど市独自の財源を確保するか、相対的に不要な公共サービスや公共事業を削ることの二つです。家計危機の際に何を節約するかは、他人ではなく自分たちで決めるのと同じこと。これからの財政民主主義の厳しい実践に向けて学習しましょう。
●連続企画● 「新型コロナ」から日本の社会を考える 第26回 コロナ禍が浮き彫りにしたフリーランス・名ばかり事業主の実態と救済の必要性  清水亮宏
 フリーランス・名ばかり事業主の実態には、多くの問題があり、各種の取り組みが行われてきたようです。労働者として認められないとは、その違いは何なのでしょうか、労働者は労働基準法によって守られていますが、フリーランスにはこの法律は、「救済の困難性」があるようで、救済の手段乏しいと言わざるを得ないのです。独占禁止法違反や下請け法違反に対して指導等を行う国の機関として公正取引委員会が存在しますが、法違反の認定に至るハードルが高く、時間も要するのです。実効的な保護のために4点が提案されています。
●特集● 住民の足を守ろう─権利としての地域公共交通
●移動する権利を実現する自治体へ─コロナ禍を超えて─  西村 茂
 
コロナ禍による移動の変化を、「促進」から「制約」の180度変換が起きています。そもそも、「移動しない/させない」という政策の意味は、基本的人権について、関わるものであり、移動は個人の生活だけでなく、社会の成立に不可欠です。この中で、テレワーク、オンライン授業など大規模な社会実験が行われたのです。テレワークは通勤や出張が「強いられた移動」であると意識され、これが地域格差が生まれたりしており、この変化の中で、政策として、外食、旅行、買い物、通院を控えるという短期間の変化が出てきます。移動の頻度が減っただけでなく手段も密になる公共交通は嫌われ、車、自転車、徒歩など「私的な」手段が好まれました。
 次に「すべての人が持つ移動する権利」「手段を選択する自由」を法律で定めているフランスの実態を追求しましょう。2019年12月にモビリティ(働きやすさ、可動性、流動性)基本法が制定されこれにより交通権はモビリティの権利に、交通税はモビリティ税に改称されました。その背景には「黄色いペスト」運動、格差への抗議運動が存在していました。この運動の発端は移動・公共交通の地域格差だったのです。交通権は今年で40年の歴史がありますがその国でなぜ移動の格差があったのでしょうか?自治体が区域内すべての公共交通の路線・運賃・時刻表・サービス内容を組織する権限を持っています。しかし旧モビリティ税は「「都市」交通のための資金と考えられ、課税できるのが都市の自治体に限定され、カバーしていたのは56都市圏のみでした。2012年には236都市圏と増加したのですが、課税できない公害や農村部は残り、多くの「空白地」が生まれていたのです。コロナ禍によって人の移動行動、意識は変化し、密になる大量輸送サービスに疑問が投げかけられ、公共交通は今後、運賃収入減とコスト増加が予想されます。今後は、自治体が自由になる財源(地方税など)の確保、公共交通からモビリティに視野を広げることがますます必要になっています。
移動権を確保するためのバリアフリー  藤田博文
 バリアフリーの実態について筆者の体験が綴られています。ぜひ全文読んでください。私たちが感じる以上の事が、原点だと気が付きます。「いつも誰かに助けられることを前提に生活する姿を想像してみてください、きっと相手に気を使ってしまって家族や友人と純粋に人生を楽しむことが出来ないと思います。確実にバリアフリー化がすすんだことは間違いありませんが、人として移動の権利を享有しているのであれば、誰の手も借りず、誰かの善意に頼ることなく自由に移動ができることこそ権利を実感できるのではないでしょうか。
●公共交通に今求められる「環境への配慮」  加藤博和
 EST(直訳すると「環境的に持続可能な交通」となるのです。)によって交通活動は持続可能になる」このことの手法を彫り上げます。交通に伴う環境負荷を削減するアプローチには、交通技術(EST1)と交通活動(EST2)の2つがあります。 EST1の典型は燃費向上や再生可能エネルギー導入で、多くの場合、自動車メーカーや電力会社の取り組み状況とそれを交通主体が選択するかどうかで決まり、地域による違いは大きくありませんが、費用・利便性と環境負荷は相反することが多く、容易ではありません。本当に環境負荷削減につながる保証はなく、科学的な予測分析や、定量評価によるチェックが必要です。
今回「環境負荷削減のために使える者でなければ、公共交通は生き残れない」ことが表明され、「だれ一人取り残さず、人にも環境にも優しい交通」の追求が施策担当者が意識する必要があるようです。

ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか  地脇聖孝
 地方の鉄道路線の配線危機が叫ばれ、バス転換や第三セクター転換がされることが起き150年の歴史がどう追い込まれてきたのか。輸送密度という㏠1キロメートル当たり輸送量の基準でもって図られてきたのです。また国鉄再建法施行令では、特定地方交通線の選定基準が輸送密度4000人と定め基準未満の路線は相当とされてきました。特定地方交通路線83線区、3157.7キロメーターのうちの38線区、1310.7キロメーター(全体の41%)が最終的に私鉄・第3セクター鉄道への転換を選びました。いつしか鉄道は限られた利用者が全てを負担し、公的関与がないのが当たり前という風に市民も信じ込まされてきました。公的関与の一つとして@(上下分離)し、、「下」は政府または自治体が全面的にバックアップすること、A災害復旧を公共事業とすることは待ったなしです。しかし、災害復旧を望んでいても、JR6社は1割の負担額にも難色を示しているのです。JRが公共交通事業者としての役割を放棄するなら、線路をJRから分離し、住民の手に取り戻すシナリオも検討されなければなりません。鉄道路線の廃止手続きを認可から届け出に変更した鉄道事業法を見直す機運も出ています。日本では路線が自治体の所有であっても、地方交付税算定の基礎となる基本財政需要額はもちろん、その根拠となる測定単位の対象にさえされていません。一方で道路・港湾は対象です。
公共財である公共交通の存続が、収支や輸送密度を尺度として機械的に論じられるのは、世界でも日本だけと思われます。およそ先進国、EU格国では、PSO(公共サービス提供義務)の考え方が普及しておりします。
公共交通の担い手のほとんどが民間企業であることで、PSOの実現が困難と認められるのであれば、経営形態の変更(再公有化)など思い切った議論にもタブーなく踏み込むべきでしょう。住民が主体的に関与し、納得して受け入れた転換を作り出す、沿線自治体協議会の法定化が必要でしょう。

●ポートランドにみる持続可能な都市交通経営の財源構造  川勝健志
 日本の公共交通は「社会に必要なサービスを提供する公益性を求められる一方で、収支をやりくりしなければならない、極めて危うい状況」にある。ポートランド都市圏での交通街づくりの基本が、周辺部に暮らす人たちが中心部に集約された都市機能にアクセスできるように公共交通を整備しようとしている点です。又トライメットという特別区制定により、公共サービスを提供する役割を担っているのです。このトライメットの収入は、全体の6割が交通税で構成され、これに連邦や州・地方からの補助金を加えると実に75%以上が公的負担になっており、運賃収入は全体の2割もないのです。また連邦からの補助金は老朽化した車両や関連施設の修繕や取り換えを行うために設けられた「補修プログラム」を積極的に活用し増価させています。また交通税は都市圏内の民間事業者や地方自治体に対しては給与総額に、自営業者に対しては圏内で稼得した純所得に課税されるので、税収は景気の動向に左右されやすい仕組みと言えます。又サービス向上を目的に資本拡張に向けた投資を賄うための資金確保に、交通税率を毎年0.01%づつ引き上げることになっていたのです。教訓として、第1に独立採算性原則からの脱却です。第2に特に鉄道のような巨額の投資費用がかかる資本事業に対しては、中央政府が恒常的で安定的な財源の移転を行ことです。第3に交通街づくりのプロセスに住民参加の機会を保障する仕組みを構築するということです。
警察法「改正」と内閣のインテリジェンス体制  白藤博行
 サイバー警察局・サイバー特別捜査隊の創設が2022年4月1日より施工された。この部署が、国家公安委員会と警察庁の所掌事務にされたのです。デジタル社会に特有な警察事象であるサイバー犯罪に対処するため、警察法が警察の事務と組織を新たに定めることは当然であるように見えます。しかし、この改正が、戦後警察法の基本理念・根本精神を壊すという事であれば、話は別です。
かって警察法2条と同36条を「警察法の脊柱」とまで「日本警察というのは架空のものであり、法的に言うと、47の都道府県警察があるだけであって、日本警察という単位一なものは存在してはいけない」と断言されていましたが。肥大化する警察庁を民主的に管理・運営することが大きな課題としてなっています。

●自治体問題研究所第62回総会報告
 岡田理事長挨拶で、「憲法と地方自治が戦後最大の危機にあり、しかもその局面が一段と進化している」と。新理事長に中山徹奈良女子大教授がなりました。
“適疎”の町村づくりを発信する─第26回 小さくても輝く自治体フォーラムin大川村 
 @小さな村から地元の創意工夫が図られ、地域の固有の資源を手掛かりに6次産業への活発な活路を見出す。A住民と議員が、首長と行政職員と議員を使いこなして、活発な議論と相互作用の生じる場としての「討議広場(フォーラム)としての議会」が問題提起されました。B「365日村の事を考えている議員」という存在の重要性とその自覚、C住民の会話の中に普段から村政や議会などの政治の話を増やしていく。D多様な生き方の実現が地域の魅力アップにつながる、E移住者と住民が交流して共感を作る事が大切。F数ではない、風通しの良い空間で個性を生かせれば地域はよくなっていくGコミュニティ社会を組み合わせて適疎な町を作る、Hないところに価値を見つけて誇りを持ち、それを外にアピールすることが大事だ。I自分たちの街をありのままを受け入れる。J画一的な基準でなく、よさはどこにあるのかを見極めて、どんな街にしていくかという心構えが重要。K地域の伝統を次世代につなげていく作業は、意識的にやってほしい。などの提言が出されています。
●東京 神宮外苑再開発問題の今とこれから  原田 暁
 神宮外苑のスポーツと緑地が都会の高層ビル群に変わるのだそうです。又この計画の推進には三井不動産・伊藤忠商事などの大資本が暗闇に入っていたのです。大きく地元の高校生などの参加や都議会での追及の波が訪れています。もう大東京に巨大建築群はいらないでしょうに。1000本のイチョウのためにも頑張ってください。
連載●
●人つながるP 「復帰50年」ハンガーストライキ 沖縄の自治を求めて  元山仁士郎

 沖縄復帰時に建議書については前回話があり、その実現はいまだ何も出来ていないことでした。その復帰時に向けて、ハンガーストライキで抗議した人の話です。本当にこの50年本土の人間として何もできなかったことをお詫び申し上げます。 
公民館における出会いと学び 第2回 女性たちのエンパワーメント  田中純子
 
公民館での人の変わり方が良くわかりました。公民館での「学び」は一人ひとりが自分の問題に気付き、人とつながって豊かな人間関係を築きながら、問題を乗り越える力をつけていく可能性をもっているのですね。
●くらしと自治と憲法と 第15回 参政権と選挙制度をめぐる問題  只野雅人
 国政選挙での投票率が50%を割る事態になっていることから、選挙制度の問題を考えて行く必要があります。非常に高い問題供託金は「真摯を欠く立候補を抑止し候補者の乱立を防ぐためのものだ」と言われるが、高額の供託金は議員の資格について財産または収入」による差別を禁じる憲法44条の趣旨に反しています。異論の存在が有権者選択を広げ、また政治に活力をもたらす面もあるでしょう。第2が選挙運動の規制の問題です。他の民主主義諸国に比べて極めて厳しいものとなっています。公正さを確保するため、候補者はいわば一律平等に、不自由を甘受することになるのです。第3が、小選挙区と政権選択は、二大政党制の追求から生まれたのですが、一党優位型の多党制に戻ってしまった。政権交代が起きず、野党が脆弱なままでは、国会審議から緊張感が失われ、また有権者の関心も低下せざるを得ません。これらのため検証して行くべきでしょう。
●シリーズ 地域発信 小さい林業で森を編集 第2回 地域にひらく自伐型林業  滝川景伍
 自伐型林業の定義の多様性に、この豊かさが現れています。大型林業機械のために大規模林道を作り林野を壊すこれが大きな問題でした。壊れない作業道を道幅2〜2.5メートルでいいのですから使う機械も、ミニユンボというショベルカーです。これ1台を使って、持続的再生可能な林地の開発ができるのですから、かって圃場整備を計画した時、自由形圃場整備工事を行った町が思い出されます。又この林地には地元の人のコミュニティの場も用意されているとか、地域財産として末永く守っていかれることでしょう。
●おきなわ定点観測 第5回 「慰霊の日」を前に─久米島・伊江島・宮古島と沖縄戦の記憶  関 耕平
 かっての沖縄は軍事基地として戦争を呼び寄せる施設や、軍隊が住民を守るものではなくむしろ命を脅かす存在であることを、観念ではなく、まさに歴史的事実として実感させられる島々の記憶は、沖縄の人は忘れていないのです。しかし、近年の自衛隊基地増設は如何なものでしょうか。
@NEWS 吹田市が市民課業務委託計画を撤回  寺坂美香
 吹田市で市民課業務委託計画を撤回されたようですが、この成果の教訓として@労働組合による発信A住民運動B弁護士意見書の問題点指摘C市議会の良識があげられています。是非参考にしてほしいものです。
●ローカル・ネットワーク
●自治の風─静岡から 第4回 浜岡原発のいま  酒井政和
 浜松原発の再稼働を許さない運動報告があり、また静岡県知事もそれを表明しているのですから大変な成果です。これからも見守りたい活動です。
●編集後記

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