広島自治体問題研究所
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2020年2月号 読者ノート

 (2020/01/20)
 
目次
 事務局として気になった記事にコメントを載せます。一緒に読み合わせしましょう。あなたの感想や意見もお寄せください。今回年末担当者が入院し遅れて申し訳ありませんでした。
●特集● 公立・公的病院の再編統合と地域医療
 今回の公立・公的病院の再編統合の一方的な報道に対し、広島県でも大きな話題になりました。地域に生きる、公立・公的病院と地域医療のつながりの現状を再度学習しましょう。声を上げていきましょう。
•公立・公的病院の再編統合と地域医療 (長友薫輝)
 今回公表されたリストは、100万人以上の地域に存在する病院を除いている、非科学的なデーターを使用している、地域の声を聞いていないなど、全く政策としては、ただ単に病床数を削減するための施策となっています。ここで確認しておきたいことは、現在4つの医療機能区分という基準で病院経営が判断されているということです。それは、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つで最も診療密度が高いものが高度急性期だそうです。この基準でのみ判断されることがいかに、地方の中小病院にとっては、また地域経済の循環、包括ケアシステムの構築にとって、相容れない基準ではないのか、市民に知らせてほしいことです。なぜならば、数値でもって経営実態が明らかにしようとするあまりその周辺がネグレクトされて、本質を見失っていくのです。公的病院での取り組みで、地方自治、そして住民自治の観点で、地域医療構想、地域包括ケアシステムをとらえ直し、地域から実情を反映した中身に造り替えていってほしいものです。
•「診療実績データの分析」の概要と問題点 (塩見 正)
  今回医療費抑制に使われている診療実績データーの分析項目は9領域・17項目だそうです。それらは、公立・公的病院が患者・住民の命・健康を守るために果している役割・機能の一部にすぎない検証項目であり、非科学的で一辺倒な側面を使っていることが述べられています。ここで明らかになる医療実績は、患者の実態を踏まえてモノではなく、治療のみで評価されています。さまざまな病気になっている患者層の反映はここではされていないのです。脳卒中になるのは老人から若者まで様々な層がなります。この層に対してその治療はさまざまであるはずですがその判定はされていません。今回それに加えて、医師・看護師不足などでの困難さは対象外になっているようで、100万人以上の地域での病院を配慮したとはまさにこの最たるものです。A基準、B基準と分け、病床数の削減のみ追求できるようにしたデーター分析で発表されているようです。アクセス悪化の評価で使用されている「20分の時間」は、自動車のアクセス距離を挙げたもので、高速道があればそれを使うとし、料金判定をしない、無意味な判断です。まさに地方切り捨て、公的責任の放棄を前提に「地方創生」を謳っているのです。今医師の削減が行われ、地域に安心して住むことができる体制が確立しない政策がとられていることを国民は知るべきです。医師の増員を要求しましょう。
•地域医療体制と人減らしにつながるカラクリ (長尾 実)
 公立・公的病院の「成果主義評価制度」の成果として「公表リスト」は発表され、今後、病院職場では職員の業務実績に対し『成果主義に基づく評価制度』が導入されていきますが、その評価の仕方と瓜二つではないかと言っています。その流れに沿っていくと、次は評価結果が賃金に連動する成果主義賃金であり、「公表リスト」の評価結果により、各種補助金等への連動が打ち出されてくるのではないかという懸念が表明されています。まさに病床削減等を強制する『必要病床数』は、平均在院日数の短縮、受療率の低下、マンパワーの確保困難による診療・入院制限など様々な要因で年々減少傾向をたどっているのが現状のようです。しかし、都道府県単位や、地域医療構想区域単位、4つの病床機能ごとでみると差があり、このままでは『必要病床数』に達しないことが明らかになったようです。今 多くの公立・公的病院が『赤字」経営を余儀なくされている中、病院の経営改善と称して、病床数の削減や、病床機能の見直し転換のダウンサイジングが強行されています。これは地域医療後退の「悪魔のサイクル」なのです。国が目指す「必要病床」の実現は、全国で156000床もの病床削減が必要であり、深刻な地域医療の崩壊が起きかねません。またそれは、地域経済への深刻な打撃へ結びつきものです。 
•地域医療を守れ─北海道の深刻な地域医療の現実と運動 (沢野 天)
 広大な大地に広がる北海道での地域医療の守り手からの報告です。広さ、寒さ、人口減少など多くの課題を持っているところでの活動の基本を学びましょう。議会と首長、医療関係者、自治体労働者と道民との結びつきを強調しています。今回北海道で55の施設が掲げられたことから見ても大変なことだったと思います。「必要な医療が受けられないのでこの町に住み続けることができない」という市民の声は、日本どこでも聞かれる言葉でしょう。国の責任を追及することがいま必要ではないでしょうか。日本国民運動として立ち上がってほしいものです。安倍内閣打倒ですね。
•国立徳島病院存続運動の成果と課題 ─住民運動を元気に輝かせる行動力と「戦略と戦術」─ (井上 純)
 徳島での病院存続の新しい戦術として、災害ハザードマップを活用している点が報告されています。これから日本では、災害が頻繁に起こるであろう時代に入り、病院の果たす役割を調査し、災害防災拠点に整備することが必要です。市民と労働組合の連携、市議会・自民党議員を巻き込んだ署名の倍加、などよくまとめられた運動方針です。ここに掲げられている、4つの教訓を見ておきましょう。@考え方の違う方々と行動を共にしても意見を認め合い決して批判はしないこと。A問題が発生した際でも『協力協働』が継続できるよう、常に建設的で冷静な言動に徹すること。B団体・政治家とは常に対等平等であり、一部の主義主張に偏らないように同じ距離感で組織運営を行うこと。C地域住民とともに行動する時も、組合員と同様に情報共有の努力を行うこと。
•「公表リスト」に掲示された公立・公的病院との懇談、自治体アンケートのとりくみ(三重) (新家忠文)
  三重県での取り組みは、10年来に地域医療の取り組みを反映した報告となっています。7施設と県との懇談した内容がを中心に報告されていますが、地域医療構想そのものの問題点として、医師不足解消されるのか、職員と地域の救急体制確立は大丈夫かと掲げてアンケート調査に入っています。この課題に対して今回の公表そのものが全く答えるものではなく、三重県との懇談でも。独自に自治体病院等と自治体が、地域の医療を「地域完結型」にしていく展望を描く責任を問う取り組みをしてきました。病床削減は地域包括ケアシステムの構築なしに進めることができないとの一致を見ていたのです。「医療・介護総がかり行動」を県内に広げる計画のようです。
•宮城県の「水道事業民営化」と住民の課題 (中嶋 信)
 宮城県知事の発案で水道事業の民営化をより強力に行うコンセッション方式が提案され、住民を抜きにどんどん計画されているようです。今回掲げられたコンセッション<公共施設運営権>方式は、資産は公有で経営を民間事業者が担当売る方式で、民営化の度合いが高まります。そもそも公共サービスは、「国民が健全な生活環境の中で日常生活および社会生活を円滑に営むことができるようにすること」<公共サービス基本法・第3条>を、基本理念とします。
•水道再公営化をみる欧州の旅─パリ・ロンドン─ パリ編 (尾林芳匡)
  水の委託管理問題の専門家である筆者からフランスでの再公営化の報告です。官から民へとの合言葉が、水道事業にも及び、多くの国で民間化が進みましたが、2018年ごろから各国での再公営化が起こってくることになり、その経過が報告されています。パリ市では、1987年に官民混合会社が設立され、出資割合は70%がパリ市、多国籍企業が14%・14%づつ持ち、再公営化まで続きました。水道料金は民間経営の不透明化により上昇し、174%にまでになっていました。この間汚職が明らかになる、知識の乏しいものが仕事につかされたり子会社が進むなど労働条件の低下が問題化してきたのです。2010年に再公営化に取り組みましたが、容易なことではなかったようです。公社に管理能力のある人がいない、ITソフトを民間が握っている、独自システムの開発が必要、担当した企業は、外される際にもタダでは収益を手放さないのです。そのために、消費者に対する啓発、消費者と連携した運動、憲章を創るなど多大な努力をし、2016年にやっと賃金格差の解消、価格の7%の値下げ水質もよくなり、稼働率も高く、監督の強化がされる、低所得者層への配慮、パリ周辺都市との連帯や国際的連帯を挙げることができるまでになっています。水道事業だけではなく、社会政策、環境政策など幅広い活動ができるようになっています。ここで憲章についてあげておきます、水は地球のものですべての動植物が享受しなくてはならない、水は組み上げた所と近いところで使う、再生していない水は捨ててはならない、水資源を守ることは政府の義務である、十分な量の水は人権である、水資源を守るのに適した人は利用者そのものである、などが述べられています。
•書評 中島正博著『「競争の時代」の国・地方財政関係論 一般財源は自治体の自由になるのか』 (纉c但馬)
 地方交付税の性格変化が2007年以降集権化し、本来の自由度を失っている実態が描き出されています。頑張った自治体にはそうでなかった自治体から地方交付税が賄われている、という問題意識から出発しています。
●連載●
•おんなのRun79
 地域の中での難民支援 (櫻井美香)

 日本社会の中で、難民の方々はひっそり生活しています。同じ人間として支え合うことの必要性が説かれています。彼女達の実態に触れてみてください。
•@NEWS 横浜市が国保の短期証をとりやめ (佐藤長世)
 国民健康保険料の滞納による『短期証』、「資格証」の交付は避けて通れないものだと思っていましたが、これがゼロとなった横浜市について、やればできるのですね。しかし、滞納整理が強められる、機械的な差し押さえがおこなれないかの危惧は?大きくなります。しかし、国保だけの取立てではない滞納整理専門官が作られ、国保精神なしでの請求行為が弱者に襲ってくるのでしょうか。
•子どもの未来図 第11回 子どもの未来を描くための手がかりA 福島の子ども─そのコミュニティを支援する国であるために─ (浅井春夫)
 福島原発当初からの危惧であった放射線の子どもたちへの影響が語られています。また、原発避難者の生活が3パターン化している報告があります。このような影響を与えた責任者は、すべからず避難者に寄り添うべきです。子どもの成長発達に関しては、国が責任を持つべきであり、甲状腺の検査で、調査対象が約37万人ありながら、受診者が約18万人とはこれでは話になりません。広島原発被害者の思いが思い起こさせますね。
Jつうしん
•史跡さんぽ56 (戸崎曾太郎)
•おいでよ47 群馬県高山村 (後藤幸三)
•編集後記
DL:76.pdf

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