広島自治体問題研究所
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2020年7月号 読者ノート

 (2020/06/22)
 
目次
 
事務局として気になった記事にコメントを載せます。一緒に読み合わせしましょう。あなたの感想や意見もお寄せください。
●連続企画●「新型コロナ」から日本の社会を考える 第2回 「コロナ禍」を地域・自治体から考える (岡田知弘)
 パンデミック状態となった新型コロナウイルス感染症は、安倍内閣の施策の結果、5月26日時点で、感染症確認数 累計16,623人、死亡者 846名となっています。安倍内閣がオリンピック開催や、緊急事態宣言を特別措置改正にこだわり時間をかけ、4月7日にようやく緊急事態宣言、4月16日特定警戒地域指定7地域から全国に対象を広げ、5月25日にすべての地域を解除する、この間3か月間に、感染者の急拡大期・緊急事態宣言発令期、そして同宣言の解除期という三段階を経験させられました。
 この3か月間から私たち学んだことは、ウイルス感染症は「戦争ではなく「災害であること。」「撲滅すべき敵」ではなく『共生』の対象であるという認識です。また地方自治体の役割と姿勢が問われており、今までの新自由主義的構造改革・行政改革の負の遺産が露呈し、コロナ禍で浮かび上がった「公共」の重要性を「アフターコロナ」社会で本来の在り方に戻すチャンスが生まれています。個々の地域で、公衆衛生・医療・福祉にとどまらず、住民生活、産業や就業の状況、国土保全の在り方も統合した「地域の将来ビジョン」を現地調査に基づいて作り、実践する取り組みが求められています。

●特集● 地域公共交通と高齢者・住民の人権保障としての交通権
 持続可能な地域づくりのために、交通権が保障された地域公共政策はどうあるべきかを考えましょう。
•地域公共交通をめぐる新しい状況と交通権 (近藤宏一)
 「交通権が広く共有されるようになってきた」と言っていますが?担い手不足のために維持できない状態が生じている実態を直視しながら、振り返ってみると次のようなことが変化しています。
 問い直される公共交通の「採算性」、人手不足の深刻化、の中、自動運転、ライドシェア、「小さな交通」、公共交通の運営主体の多様化、などが表れ、今回MaaS「単一のサービスとしての移動」が紹介され、新しい動きについて、どのように活用して、交通権の発展を図っていくのか、現場での議論の参考にしてください。ヘルシンキではすでに導入されているものです。

•地方自治体の「公共交通条例」と交通権 (香川正俊)
 交通権の意義が整理されています。「「国民の交通する権利」であり、日本国憲法の第23条(居住・移転及び職業選択の自由)、第25条(生存権)、第13条(幸福追求権)など関連する人権を集合した新しい人権」と規定しています。交通権を初めて社会権の一つとして明記したのはフランス(1982年)「国内交通基本法」ですが、韓国では、裁判規範性のある具体的権利を定めた「交通弱者の移動便宜増進法」があり、財源についても、「交通税法」が定められています。一方我が国における交通権の未成立な実態の要素として、プログラム法としての「交通政策基本法」(2013年)制定に至る過程で否定された主な理由が挙げられています。@法制上、「移動権」の具体的な内容が定義できるだけの国民的合意がない、A行政論上、財源的な裏打ちが整わない現状では権利を保障できず、不作為を問われたり、都市・地域づくりに障害が生じる恐れがある、B社会実体論上、「移動権」の規定を持って課題が解決するわけではなく、当事者間の共同に当たり対立する意識を生じさせる恐れがあるなどです。これは公共交通事業者からの陳情活動があったからのようです。
 しかし、「公共交通空白地等」における移動手段の確保状況が、数値的に挙げられ、この地の可住面積は3万6433平方キロ(全体の約30%)、人口で735万1000人(人口の約5.8%)と明らかにされています。この交通空白地等を縮減を目指しさまざまな条例制定(金沢市、奈良県、長岡京市、加賀市、新潟市、熊本市、高松市)の動きが紹介され、福岡市の「公共交通条例」が紹介されています。今後交通権の法定化と、「公共交通条例」制定の動きが増すことを期待します。広島での研究の再開も期待します。

•交通権を保障した交通政策で安心できる地域を─事例から学ぶ (可児紀夫)
 地域の交通を確保するための基本的な考えとして、
@交通は人権であるという考え方。A参加と協同。B持続可能な地域づくりを挙げ、
 交通の意義は、
@持続可能な地域社会を作り上げる。Aまちづくりの土台。B社会的な便益を地域にもたらす。C人の交流、情報交換などを通じて地域社会や人々の文化を高め、豊かな生活を築く。D誰もが人として幸せに生きていくための大切な人権(交通権)を挙げています。
 今日このような深刻で切実な交通問題を引き起こした要因は、
@国、自治体、そして私たちも交通の意義を十分に理解していなかった。A戦後日本の交通政策の二つの誤り、車社会化に対応した総合的な交通政策を確立しなかったことや、2000年前後から推進された運輸事業の規制緩和政策。B憲法の地方自治を活かした住民参加が交通政策に生かされなかった。C憲法を羅針盤として政策論議がされなかった。憲法の理念を実現する地域交通政策は、交通権を政策理念として地域の課題の本質をとらえ持続可能な地域社会を住民の参加と行政、交通事業者などとの共同で作り上げていくことが大切だと言えます。
 以下兵庫県の福崎町長野県の木曽町、名古屋市、三重県玉城町などの事例が報告されています。

•過疎・高齢社会における地域公共交通の展開─関西北部地域を事例として (野村 実)
 過疎過密・高齢者化の中で地域社会が人口減少を進める中、住民の「生活の足」をどのように確保していくのか、画一的な答えはなく、各地域のニーズに沿った政策展開や実践の交流が求められます。また「令和元年、交通政策白書」(国土交通省、2019年)(
交通政策白書は、交通政策基本法(平成25年法律第92号)第14条第1項及び第2項の規定に基づき、交通の動向及び政府が交通に関して講じた施策並びに交通に関して講じようとする施策について、毎年、国会に報告するものです。)によれば、交通事業全体の人手不足や、地方部における輸送人員の減少、サービスの縮小など地域公共交通に関わる諸課題が指摘されています。今回は、京都府・南丹市美山町の例、として自家用車や公共交通を利用しづらい「グレーゾーン」層の人々が一定数あらわれこのような人々に具体的にどう対処するのか提案されています。MaaSなどによるモビリティ(移動性)確保の可能性を、情報通信技術の発展によって一つのサービスとして、いくつかの地域でも取り組まれ出しています。その実例として兵庫県養父市の例が出ています。新たなシステムやその発展を肯定的にとらえつつ、地域の多様なアクターが手を携えて、住民の「生活の足」の確保に努めていくことが大切です。
•愛媛県内子町の公共交通の現状と課題 (前野良二)
 一町内の全域にデマンドバス運行を巡らせ、維持のための報告です。人口減少の続く中、町内各地の豊かな自然と特色ある地域文化を大切に、地域公共交通を維持・充実させる街づくりを行っています。競争原理と民間参入に主眼を置いた国の規制緩和や居住機能や都市機能を集約させるコンパクトシティ化を阻止するため、限られた地域資源を生かすことを公共交通システムに取り入れた行くようです。
Uber(ウーバー)で配車し、マイカーを使ったライドシェア型公共交通=「ささえ合い交通」の実践 (東 恒好)
  スマートフォンを使いウーバーで配車する形のマイカーを使った「公共交通空白地有償運送」であり、行政に要求するのでなくNPO独自で運行するもので、自由な移動を実現しています。京都府京丹後市丹後町で、市営コミュニティバス(デマンド型)が、利用方法や運行ルートにおいて利便性を劣り、2015年夏から協議を始め、2016年5月26日に「ささえ合い交通」の「出発式」を開催しました。メリットとして6点、運行管理として2点、今後の課題として5点の指摘をしています。スマホ購入費と通信費が高額のため保有者が拡大しないことから、災害情報等の提供と合わせ普及策を求めています。全国各地で移動問題に困っている中「自家用有償旅客運送『反対」を全国一律に唱えることを控え、真に利用者の視点に立った自由で有効な移動手段の実現を最も大事にしてほしいとのこと。
•「新しい生活様式」のもとでの社会教育施設「再開」ガイドライン─市民の「学びの場」をどう保障するのか (朝岡幸彦)
 緊急事態宣言の下で、「命か自由かの選択」として制限を受けることを「やむおえないもの」と断定できるのかという問題があります。ここには経済問題とは別の「権利の制限」という問題があることに注目する必要があります。まさに新型コロナウイルス感染症と「共存」する社会の中で、どのように「学び」を継続・発展させることが出来るのか。私たちは歴史に試されているかのような気がします。
•会計年度任用職員制度で官製ワーキングプアを固定化・正当化させないために (坂井雅博)
 2020年4月から自治体の非正規職員は会計年度任用職員となる制度が生まれましたが、この問題での把握と今後の取り組みについて新潟県内の調査報告です。この制度の限界がどの程度のふらつきで表れているか、広島県内での動きもつかみたいものです。広島自治研月報432号に、広島市保育園支部の報告がありますが、この制度の悪用が出ています。読んでみてください。フルタイム会計年度職員とは何????。市民への訴えができていないのか。公務員制度が大きく破壊されていくようです。今回のコロナ対策での公務員の専門性、公共性の訴えが今ほど必要ではないでしょうか。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
●連載●
•@NEWS
 緊急事態宣言 ネットカフェを追われた人たち (田川英信)
  コロナ支援策での中で、「難民」が生まれている、行き場を失ったネットカフェなどを「住まい」とされていた方々。東京都で約4000人ほどあり、本来なら、生活保護等の福祉制度につないで生活を安定させる必要があるのに、ほとんどそういう気配りがされていないとか。生活保護に対する自尊心との対立がこのような人々を生むという。公でアパート確保と自立ぬ向けた施策がこのたびの事案で浮き彫りになっています。ハウジングファースト型の支援で、安心できる住まいを提供することが何より大事です。
https://www.calling2-blog.com/housing-first/
•おんなのRun84 保護者が繋がり、笑顔で帰る場所づくり (高原千里)
  吃音の子どもさんに対する親の活動は、「どもることは悪いことではないと、吃音があっても絶望でなく希望を持てる未来があるよ」ということですね。100人に一人はいるといわれるとか。
•自治体清掃はどこへゆく 第5回 災害の後にあるもの (福田日輪)
  災害が大きくなる、職員は少なくなり、矛盾のしわ寄せは有事に被災者に襲いかかる、これが住民のくらしを守るべき自治体が徐々にその責任を放棄している証拠です。端的に清掃現場に現れていますね。
•再生可能エネルギーと環境問題 第4回 太陽光発電B「景観への影響」 (傘木宏夫)
 地域の再生可能エネルギーが地域の景観をつぶしてしまう、この問題の重要性を述べていますし、景観への影響度も、三種類挙げこれを事業計画段階で景観変化の程度をイメージできるようにすることで防ぐことを提案しています。NPO地域づくり工房の自主簡易アセスを見てください。
http://eaps.omachi.org/?page_id=43
Jつうしん
•自治の風─沖縄から 第3
回 石垣島・宮古島への自衛隊配備と自治の危機 (湧田 廣)
 石垣市で、自治基本条例廃止案が否決されて2019年12月、このような「民主主義の危機」が起きるとは沖縄でも大変なのですね。
•わがまち51 福島県川俣町 (佐藤金正)
•編集後記

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