広島自治体問題研究所
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2020年11月号 読者ノート 

 (2020/10/26)
 
目次
コロナ対策はいかがですか。これから乾燥機に危険な時期です。気を付けましょう。
 事務局として気になった記事にコメントを載せます。一緒に読み合わせしましょう。あなたの感想や意見もお寄せください

●連続企画
●「新型コロナ」から日本の社会を考える 
  第5回 危機状況で明確になった議会の課題−二極化した議会の動向を考える− 江藤俊昭

 コロナ危機に対して地方議会の変化が述べられています。かっては、首長専決処分で過ごすことが多かったようですが、地方自治法の改正で、この専決処分が難しくなっています。そもそも議会軽視の行為に対する処分であり、当然かもしれません。しかし、このコロナ危機に際し、議会の方から、首長へ専決処分を要請して所があるとか。一方このようなコロナ危機にあって、行政はアップアップしており、住民の声を聞き整理することが出来ない状態のとき、議員が住民の意見を取りまとめ行政に、要請することをやった飯田市議会・取手市議会などの議会があったとのことで、新しい議会活動として評価されています。矢継ぎ早びやに政策を出すとき、整合性(従来の政策との)・総合性(かたりょりはないか)、財政(財政負担を今後どうするか)が大切です。また警告として、中央集権化が問われる事態が発生しているようです。国会の予算審議中に各市町に同様の補正予算の早期成立の手続きを進める働きが行われたようです。議会の決定が必要であるにもかかわらず市町村長の専決処分を要請しているのです。住民自治の根幹は議会です。だからこそ、地域経営にとって重要な権限を議会は有しているのです。
●特集● 地方再生と第2期地方創生総合戦略─維持可能な自治体を考える
  東京一極集中を是正して総人口減少局面から脱却を掲げた「地方創生」(まち・ひと・しごとと創生)政策が、まさに崩れ、デジタル化にアクセルを踏もうとしています。全国各地の「地域づくり」そしてオーストラリアの山岳農村再生の教訓からも学び、維持可能な自治体を展望する機会にしましょう。
 ・対抗軸は、住民自治による地域社会の復活・振興 第1期地方創生の現実と第2期の課題 保母武彦
 地方創生の時期を改めて振り返っています。安倍内閣は、消費税の8%増税を行った折、内閣批判が強まっていました。その時、益田レポートにより全国市町村の約半数が消滅自治体だとの宣伝が行われ、驚愕したものです。そして、人口対策の遅れへの批判が噴出していた時、安倍内閣は、世論の関心を消費税増税問題から人口減少問題に向けさせ、地方創生担当の行政機構と担当大臣を新設し、「まち・ひと・しごとと創生法」を制定し、地方自治体には、「地方創生ビジョン」と「地方版総合戦略」の策定を要請したのです。
 この実行手段が「選択と集中」であり総合戦略にKPIを付けさせ、国がこれを評価・選別し、より選択された『努力する自治体』には資金と支援策を集中させ地方を支配してきたのです。地方創生は、「統治構造の改編」が真の狙いだったのです。
 今後出される第2期の総合戦略には、4本の基本目標と2本の「横断的目標」が挙げられています。人的支援と情報支援を強化する交付金でもって自治体の仕事を操作しようとしています。住民主権を守り、本当に必要なのは公的資金による農林業経営の保護育成であることに気を付けてください。地域の新局面を切り開く地方自治を進めるために、補助金に安易に飛びつかず、住民自治による地域社会の復活・振興に取り組んでください。
 地域の新局面を切り拓く地方自治の提案として、第1に、地方創生の目標、第2に地方創生に主体、第3に地方創生の方法、第4に計画づくり を提案されています。
:参照 長野県栄村の実践的住民自治

https://www.soumu.go.jp/main_content/000381719.pdf 
・オーストリア山岳農村の創生に学ぶ 石倉 研
  オーストラリアを、日本の農村の持続的発展の先進地として、そこでの政策、首長の考え方が挙げられています。日本の政府予算の農林水産業予算の内、農村地域向けの直接支払い予算は、3割に過ぎないのに、オーストリアは農林業予算の財政支出の4分の3が直接支払いです。このような政策への転換が必要であり、このためには「山岳農業経営台帳」のような地道な個々の農家の自然的・経済的営農困難度を、気候や外敵・内的交通条件といった複数の指標に基づいて科学的・客観的に算出されることが大切です。
 また「エコ社会的農業政策」の理念を国民のものとすることも大切です。「この村を生きる価値ある農村にしたい」「住民にとって自分の村が目の前にあると思えることが重要です」などの言葉が印象的でした。

•第1期地方創生とは何だったのか─静岡県に見る「地方創生」の現実 (川瀬憲子)
 第1期地方創生とは何だったのか、この政策の特徴は、選択と集中」の強化によって、従来の自治システムを基本とする地方統治機構を解体していく側面を持っていること。その手法は、地方創生推進交付金を導入することにより各自治体はKPI(重要業績評価指標)を設定しなければならず、結果については政府がPDCAサイクルによって効果を検証していくのです。自治体間では業績を上げるために競争を余儀なくされ、結果が出せなければ、交付金を削減するという形で進められました。
 つまり、国主導で上からの地域間競争を促す戦略であり、自治体の集約や再編が余儀なくされる可能性が大きいと言えます。これまでの国土計画にあるような「均衡ある国土の発展」ではなく、経済のグローバル化への対応や経済成長を最優先させて、国際競争力を高めるために、中央集権型・集約型国土への再編を進めたのです。
 これらは、市民生活における災害リスクをさらに高める側面を持っており、基本的人権の尊重といった面からみれば多くの課題を抱えていると言えます。さらにこれらは一連の諸施策は行政部門を縮小させ、トップダウンによる統治機構への再編を促す側面を持っており、住民自治を基本とするボトムアップ型のシステムに転換する必要があります。

・汚れた「水の都・三島」を再生 「グラウンドワーク三島」のノウハウ (渡辺豊博)
 豊かな水辺自然環境の再生・復活を「グランドワーク三島」を起こして28年の経過し、今では「右手にスコップ・左手に缶ビール」「議論よりアクション」の合言葉で地域の多くの人々が街を愛して行動しています。このような地域に不釣り合いな開発事業が提案されたのです。「蜜」を創るというこの地域には似つかわしくない事業が採択されたのですから、大変です。地域の力を見守っていきましょう。
http://www.gwmishima.jp/
・認知症の人とともに築く総活躍のまち御坊市 (鈴木裕範)
 御坊市は、2019年4月に「認知症の人とともに築く総活躍のまちづくり条例」を施工しました。この条例を創るに際し、認知症の当事者が参画しその声を尊重して作りあげたのです。その背景に行政職員らの意識の変化、「縦割り行政」を超えた連携が生まれたそうです。認知症の人が暮らしやすい社会は、すべての市民にとっても暮らしやすいまちではないでしょうか。多くの言葉が生まれています読んでください。
御坊市http://www.city.gobo.wakayama.jp/fukusi/korei/ninchisyou_soukatsuyaku/1559270456049.html
・小さな町の少子化への挑戦─教訓と、今、抱えている課題 (森藤政憲)
 小さくても輝く自治体フォーラム参加の奈義町でも、この地方創生事業が取り入れられ、町民の意向に反した施策が続いているようで、子育てでの成果で出生率を誇った町が新たな課題を抱えているようです。子ども医療費の無料化を段階的に高校卒業まで拡大、任意ワクチン接種の無料化などなど実にきめ細やかな対策が取られてきました。自ら合併しない町と決断した歴史も住民は持っていますね。頑張ってもらいたいものです。
https://www.town.nagi.okayama.jp/gyousei/kosodate_kyouiku_bunka/ninshin_shussan_kosodate/kosodate/kosodate_ouensengen.html
・小規模多機能自治による住民主体のまちづくり〜雲南市の地域自主組織〜 (大谷吾郎)
 島根県の雲南市は広島県の隣の市で、その活動報告ですが、合併時の取り決めであった地域自治の在り方が、生きた形で実を結んでいるようです。(市民と行政の共同にまちづくり)の基本があってこそのこと、合併時の体制がきちんと整理された結果だと思います。
 また自主組織の形は、地域の自主的意向を反映するものとなっていること、「一人1票制」での意見の集約、交流センターという交流の場が公民館から発展して位置づけられていること、地域自主組織の事務局員が常駐し、人件費と事業費を市の交付金として保証しているなど、大変参考になります。ぜひ現地に行ってみたいものです。*地域自主組織図を参照してください。
https://www.city.unnan.shimane.jp/unnan/kurashi/machidukuri/jisyusosiki/self05.html
・北海道東川町の総合的な町づくりとその教訓 (守屋貴司)
 町政が開かれたシステムへと、縦の序列組織から並列組織へ、いつでもだれでも、町をよくする提案ができることになっています。写真芸術を活用するなど、多彩な人材が管理職として活躍しています。また積極的に町外からのアイデアを取り入れる柔軟性や、組織風土の変革を行うなど地場の力の進展があります。
  また点から線、そして面への広がりへ、取り組む方向性が明確になっています。一方、町民全体の所得を挙げる取り組みに、二宮金次郎を再評価し「地域再生のプロ」と礎にして参考にしています。:東川町ホームページ
https://town.higashikawa.hokkaido.jp/about/
◆シリーズ 第32次地方制度調査会答申を読み解く
第3回 第32次地方制度調査会答申における「公共私の連携」 門脇美恵

 「2040年ごろから逆算し顕在化する課題に対応するために必要な行政体制の在り方等に関する答申」の中にある「公共私の連携」が持つ矛盾について報告されています。この報告書は、人口減少と高齢化により、「公」である市町村の行政資源の制約を理由にした後退と、「私」である民間事業者の採算の取れない領域からの撤退を多様な主体、とりわけ「共」としての地域住民等の自主的組織によりカバーすることにより地域のくらしを維持していこうという戦略でした。
 今必要なことは、統計上の人口予測データーで持って悲観的結末の危機をあおり「公共私の連携」を施なることではなく、これまでの政策を総括し、今後どのような社会をつくるかの構想をすることであり、その際に当然に憲法の諸原理、とりわけ基本的人権の保障と民主主義・地方自治の原理に立ち戻る必要があります。「公共私の連携」では『小さな政府』が前提とされ、行政資源の制約が議論の出発点とされており、その前提自体を見直す必要があります。

・新市庁舎の建設を問うた垂水市の住民投票 上田道明
  新庁舎建設が高度経済状況の中で建てられたところでは、耐用年数が来て大きな課題です。この新庁舎建設に市民がどれだけ参画できているかが大きな問題です。行政としては国の予算との関連を重視してしまい、市民の声を十分反映せず、突如として提案されるのでしょう。ここでは住民投票で行政の過ちを糾弾する手法を筆者が述べているように投票結果、今回住民自治について一定の進歩があったが、今後地域社会が広く合意できる、かつ実効性を備えた対案作りが注目されます。
・「生産性向上」で介護の質は守れるのか─全世代型社会保障検討会議のねらい M畑芳和
 介護事業における人員配置は現行国基準では、入居者3人当たり職員1人以上です。これを介護サービスの生産性という土俵に上げ検討しているのが、全世代型社会保障検討会議です。「生産性の向上の内実は、介護人材不足問題の本質である低賃金をはじめとした劣悪な労働条件には一切手を付けず、テクノロジー活用を前提とした機械化、省人化、その先の基準緩和により、見かけ上、介護人材不足問題を解消することを狙うものです。
●連載●
・おんなのRun88 性暴力の二次被害、防ぐには(上) 卜沢彩子
 
 性暴力とセカンドレイプについて、*公正世界仮説による被害の実態を知らずに、偏見や誤解に満ちたイメージで語らることが起きないようにしたいものです。現状を知ること、そして性暴力を許容せず、反対する姿勢を示すこと、このことがセカンドレイプを減らし、性暴力を防ぐことにつながるのです。

*出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』公正世界仮説(こうせいせかいかせつ、just-world hypothesis)または公正世界誤謬(こうせいせかいごびゅう、just-world fallacy)とは、人間の行いに対して公正な結果が返ってくるものである、と考える認知バイアス、もしくは思い込みである。公正世界仮説は社会心理学者によって広く研究されてきており、メルビン・J・ラーナーが1960年代初頭に行った研究が嚆矢とされる[1]。以来、様々な状況下や文化圏における、公正世界仮説に基づく行動予測の検証が行われ、それによって公正世界信念の理論的な理解の明確化と拡張が行なわれてきた
@NEWS グリホサート禁止の世界的な流れと、日本のこれから 八田純人
 除草剤としてメーカーや行政機関が、現在の使用範囲では、有害ではないと結論付けているものが、国際的に規制を求めるものとして持ち上がっているようです。日本でも広く使用されているものです。気をつけましょうでは済まない。
・新型コロナと日本の公衆衛生・医療−その特徴と課題− 第2回 新興感染症への備えの枠組み 松田亮三
 新型コロナウイルス感染症への公衆衛生上の対策が例規され、関係機関が疎なるべき体制がアメリカの事例でもって15項目に挙げられています。日本でこのたび整備が順調だったのは、2012年に成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が成立していたからだと言われています。これが改正され実施されているのですが、国際保健規約により他国の専門家を招いて行われた評価では、日本の総評は総じて高く評価されていたものの、4点にわたって指摘され、実務的には3点課題が挙げられています。早期な改善解決を望みます。
・いらっしゃい! 学校図書館です! 第3回 読むこと知ることの楽しさ・おもしろさを伝えたい 武田江美子
 
スマートフォンやパソコンの利用で、実は自分好みの情報ばかりに触れ、逆に視野を狭めていないか危惧されています。
・自治の風─茨城から 第1回 市民の目でみたつくばの今を紹介する『つくば市民白書』づくり 山本千秋
 コロナ禍の中つくば市の市政白書が作られています。4年に1回のペースで作られたもので、つくば市政に関わっている人など総勢43人と2グループと顔触れが多彩です。

http://www.tsukuba-hakusho.sakura.ne.jp/ 
•わがまち55 島根県海士町 (大江和彦)
•編集後記

島根県雲南市の地域自主組織
長野県栄村の住民自治

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