広島自治体問題研究所
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2024年年頭のあいさつ
 水馬朋子広島自治体問題研究所理事長

  安全で安心した生活ができる広島を共につくりましょう
                                       広島自治体問題研究所理事長 水馬朋子
謹んで新春のお喜びを申し上げます。
新年早々、能登半島地震が発生し、1月8日には168人の死亡が確認されました。まだ安否不明者が300数人おられ、早期の救命と救援が求められます。
 亡くなられた方々にご冥福をお祈り申し上げます。
 また、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
 1月2日には羽田空港で日本航空516便と海上保安庁の航空機が衝突し、炎上しました。日航機の乗客と乗員は全員脱出できましたが、海上保安庁の航空機では乗員6人のうち5人が死亡しました。原因解明が求められます。
 新型コロナウイルス感染症が2023年5月に、感染症分類が5類に移行され、生活が少しずつ元に戻りつつあります。コロナ禍により、低迷した経済やくらしの立て直しに取り組もうとしている時期、政治がゆれています。
 自民党派閥による政治資金パーティー収入の裏金疑惑が発覚し、議員逮捕に至っています。ついに、カネの力に頼る自民党の体質が明らかになりました。企業や団体献金で政治がゆがめられ、自民党はこれまでに、消費税導入、社会保障カット、非正規雇用の拡大、賃金カットなどを進めてきました。
 岸田首相は、日本経済の停滞の原因として、「コストカット型経済」を挙げ、そこからの脱却を提案しています。しかし、労働者の実質賃金が下がり続け、非正規雇用労働者は労働者の4割を占めるまでに至っています。
 医療や年金の給付は削減され、企業の社会保険料負担の伸びは抑えられ、実質は国民負担が増える仕組みになっています。
 外交では、敵基地攻撃能力保有と軍事費大幅増額が閣議決定されたましたが、この目的はアメリカが進める「統合防空ミサイル防衛」への参加にあることが明らかになりました。そのアメリカバイデン政権は、自衛権の名でイスラエルを擁護し、武器支援を継続し、停戦を求めていません。国連総会は、10月に「人道的休戦」、12月に「人道的停戦」を求める決議を採択しましたが、イスラエル・アメリカなどは反対しました。世界各地で人々が「ジェノサイド(集団殺害)を許すな」「即時停戦」の声をあげています。イスラエルのガザ侵攻により、ロシアはウクライナ侵略で劣勢を挽回しつつあるとの見方があります。これらの戦争の解決には、国際法と国連憲章に基づく対応が求められます。
 また、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐる軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更について、国が沖縄県に代わって承認する「代執行」を認める判決が2023年12月20日にありました。沖縄県民の民意、沖縄県という自治体の権限を踏みにじるものです。
 このような情勢の中、県民の暮らしを守り、平和を維持していくために、本自治体問題研究所では、地方自治体が住民主体の運営となるよう調査・研究等を行い、さらなる住民の立場に立った支援をしていきたいと思っております。
 対米従属と大企業優先の政治により、国民は生活苦においやられています。広島自治体問題研究所では、この社会のしくみを住民に伝え、住みやすいまちづくりを住民と協働して進めてまいりたいと思います。当自治研活動に、多くの皆様に参加いただき、共に学習し、活動を進めていきましょう。 (参考資料:しんぶん赤旗2024年1月7日付け等)

2023 年頭のあいさつ 
生きがいをもって生活できる広島の実現に向けて   
 水馬 朋子(広島自治体問題研究所理事長)

   謹んで新春のお慶びを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症が世界的大流行して4年目になりました。現在、第8波となり、医療現場はこれまで以上に逼迫し、社会生活や経済活動にも影響が出ています。
さらに、ロシアのウクライナ侵略により、コロナの感染拡大に伴う市場の供給停止に追い打ちをかけ、世界有数の穀倉地帯からの輸出が不安定になり、世界の市場に影響が出ています。コロナ禍による労働形態の変化により、収入が途絶える人も増え、更なる物価高騰に生活が困窮する人が増えています。
 また、地球温暖化に伴い、自然災害も増加し、大災害への対策など安全なまちづくりが求められています。
 昨年末の12月23日、岸田政権は2023年度政府予算案と「税制改正大綱」を閣議決定しました。この予算案は10兆円を超える軍事費を確保するために社会保障などの予算を削減し、「税制改正」では軍拡財源として復興特別所得税の流用を盛り込んでいます。「核兵器禁止条約」が2021年1月に発効し、昨年6月の第1回核兵器禁止条約締約国会議に岸田政権はオブザーバー参加も拒否しました。政権が大軍拡と大増税を進めようとする一方、世界では、外交と理性の力で平和をつくる流れもできています。
 広島県では、PCR等検査無料化事業を推進し、先進的対応をした時期もありましたが、本年5月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控え、コロナ禍の経済回復など課題を抱えています。
 さらに、2018年広島県教育委員会教育長に公立中学校民間人校長であった平川氏を知事が抜擢しました。当初は、子どもの主体性を育てることを目的とした教育改革、自由闊達な組織改革を目指し、公立初のイエナプラン教育校の開校、高校入試改革などを実践していました。ところが、県教委は2022年12月6日、某法人と結んだ2件の契約について、官製談合防止法違反や地方自治法違反があったとする外部専門家の調査結果を公表しました。
このような情勢の中で、県民の暮らしを守り、平和を維持していくために、本自治研は、地方自治体が住民主体の運営となるよう調査・研究等を行い、さらなる支援をしていきたいと思っております。自治体の実情や問題点を住民にわかりやすく伝え、一緒に対策を考える機会を持つ必要があると思います。その考えの基となるものが科学的ものの見方です。その研究を行う科学者の代表機関である「日本学術会議」は、内閣総理大臣所轄の下、独立して職務を行う機関として設置されているにもかかわらず、政府は独立性を侵害する法改正案を提案しようとしています。これらの政府の方針に対峙し、県民と協働して、住民が安心・安全に生活できるまちづくりを進めていきたいと思います。
 

理事長就任のあいさつ
  水馬朋子日本赤十字広島看護大学教授

 
 2022年度から理事長を拝命しました水馬朋子でございます。
歴代の理事長は、行政法などの法律の研究者でありましたが、私は公衆衛生看護学を専門とするもので、自治体問題研究所の理事長となるのは躊躇しました。
現在、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延に伴い、住民の生活が脅かされ、地域住民のつながりが低下し、経済情勢も不安定な状況になっております。このような社会的問題が多様化・複雑化している時期に、住民の健康と福祉を守る行政の使命を探究し、対応策を提案できるよう、この自治体問題研究所も役割を発揮する時であると考え、自分の専門性を生かした自治研活動を創り出したいという思いに至りました。
 さて、「公衆衛生看護学」とは、新型コロナウイルス感染症対策の第1線で活動している“保健師”の業務のことです。保健師の活動は、一般にあまり知られていない時代もありました。自宅で療養されている方の家庭訪問に伺っても、保険の外交員と間違えられ追い返されることもありました。今では、多くの人に認知されるようになり、育児相談や生活習慣病対策、精神障害者への支援等、地域で生活されているすべての住民の健康づくりを支援する看護職であり、市町村等の職員であることが知られております。その上、このコロナ禍で、感染症対策には保健師が対応していることが知らされました。1992全国に852カ所あった保健所は、2020年4月現在469カ所に削減されており、コロナ対応の不十分さが周知のものとなりました。
 コロナ禍で集団の集まりを制限することにより、地域のつながりが一層希薄化しています。ソーシャルキャピタル(地域のつながり)が高いほど、犯罪が少ない、健康度が高いなどという研究結果があります。
今こそ、地域の人々のつながりを強化し、住みやすいまちづくりに貢献できるよう、会員の皆さま、関係者の皆さまと協働して、広島自治体問題研究所の活動をさらに活性化していきましょう。
                2022年
           広島自治体問題研究所理事長 水馬朋子

理事長退任のあいさつ
  山田健吾専修大学教授

  メッセージ
 
 新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあるように見えます。私の職場である大学でも、学生の皆さんも教職員もマスクを着けていますが、9割の講義は対面となりました。様々な場面でも、新型コロナ禍前の日常に戻りつつあることは実感できます。
その戻ってきた日常は、人間が人間らしく生きていける日常であるかについて疑問に思うことが少なくありません。私がいま住んでいる首都圏では、JRや私鉄での人身事故はまだまだあります。今週でいえば、私が通勤で使用している私鉄でも月曜日に人身事故がありました。東京都庁前では食料品の無料配布はいまも行われています。駅では着の身着のままで座り込んでいる高齢者の方も見かけます。働くこと、食べること、住む場所といった、生きていくために最も大切な部分が、日本社会ではいまもって保障されていないようです。新型コロナ禍でこれが深刻化しているように感じます。そして、以上のような日常であることが、取り立てて報道もされず、また、話題にも上らず、あたりまえのようになっているのが怖い気がしています。にもかかわらず、首都圏は不動産バブルといわれています。
ところで、ロシアによる一方的なウクライナ侵攻はいまなお続いていますが、これを契機として、台湾有事が声高に叫ばれ、改憲、憲法9条改正、日本での核兵器配備を求める声がいろいろなところから聞こえるようになりました。岸田首相は北大西洋条約機構という集団防衛機構(この機構の中心はヨーロッパの連合軍です)の首脳会議に出席するようです。6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では特に明示されませんでしたが、いわゆる骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2022 について)では、「NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた」ことに触れたのち、「新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」ことが明記されています。
「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、生活困窮については「長引くコロナ禍により、貧困を抱える世帯の生活が厳しくなるとともに、孤独・孤立の問題が深刻な社会問題となっている。困難を抱える方々と行政の橋渡しをするNPOは重要であり、孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援する」といいます。この叙述からすると国が自ら支援するのではないように思えます。 骨太の方針では、子供の貧困に触れるだけで、しかも、「こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、こども食堂のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する」のみです。生存権保障にかかわる部分は、もしかすると、DX、Aiを含む成長戦略で改善するということかもしれませんが、アベノミクスの三本の矢のうち成長戦略に関する部分は放たれないままでした。
2022年度自治体問題研究所定期総会でも確認されたことですが、いまこそ、憲法を暮らしの中に生かすための取り組みが大切になっていると思います。参院選の争点はここにあるはずです。広島には、以上の問題を含めた地域が抱える様々な問題に取り組み、憲法を暮らしの中に生かす、ということを実践している会員の方々がいます。広島自治研は、会員方々の地道な活動を支えていくことが求められているのだと思います。
 
           2022年6月11日
           広島自治体問題研究所 理事長 山田 健吾
 

2022年年頭あいさつに代えて

  2022年広島自治体問題研究所の課題
              広島自治体問題研究所理事長 山田 健吾
 1 2021年の広島自治研
 (1) 新年あけましておめでとございます。12月中旬くらいまでは、2022年は新型コロナ感染状況もこのままで悪くならず、いつもの生活に戻ることができるかなと淡い期待を抱いていましたが、諸外国と同様になりそうです。12月31日の感染者数は23名ということでしたが、2022年1月4日には109人、1月5日に138人、1月6日には272人の感染が発表されました。湯崎英彦広島県知事は政府に対して「まん延防止等重点措置」の適用の要請するようです(みなさんにこの原稿を読んでいただいているときには同措置が適用されていることでしょう。昨年9月30日に緊急事態宣言が解除されて以降、住民に身近な存在である14の市と9の町の基礎的自治体と広域的団体である広島県がこれに備えてどのような取り組みをしてきたかが問われることになります。
 (2)@ さて、広島自治体問題研究所は、2021年に様々な取り組みを重ねてきました。まず、取り上げなければならないのは月刊誌「ひろしまの地域とくらし」の発行です。2021年1月20日に発行された444号では「核兵器禁止条約の発効を受けて」、「広島市のパートナーシップ宣誓制度について」、 「新型コロナ感染症で医療機関に深刻な影響が 〜歯科医療機関で受診患者が激減〜」、「平和大通りに  『にぎわいづくり』?」の4つのテーマが取り上げられました。その後も、時宜に適った地方自治や広島県の課題や問題点が取り上げられ分析されています(449号に掲載された橋本和正「宮島訪問税についての一考察」、450号に掲載された田中敬子「75歳以上医療費2倍化(2割化)は許されない」、453号に掲載された竹森雅泰「『黒い雨』訴訟 広島高裁判決確定と今後の課題」、455号に掲載された大内理枝「広島市の放課後児童クラブ指導員の現状と課題」は私が担当しているゼミナールや講義で紹介させていただきました)。
A 2021年7月4日には市民公開講座を開催し、続けて、ひろしま自治体学校も開催しました。2020年広島自治体学校は新型コロナ感染状況が悪化したためZOOMで開催せざるをえませんでしたが、2021年は対面で実施することができました。そこでは、特別報告として、大平由美子さんに「ジェンダーの視点から見た広島県政」、藤本健さんに「『コロナ化と地域医療』−今後にどう備えるか」というテーマでご報告いただきました。後者のご報告では2021年8月末の、いわゆる第5波がピークのときは感染者の1493人が自宅療養とされ、往診も食糧支援もない状況にあったことが紹介されました。いまにもおとずれそうな第6波で広島県はどうなるのか不安にならざるをえません。このことはさておき、ひろしま自治体学校の記念講演では「コロナ禍後の地域社会をどうつくるのか−中山間地域での実践から考えるオールタナティブー」というテーマで、関耕平先生(島根大学)ご講演をいただきました。
 ➂ 以上の恒例の取り組みとは別に、広島自治研では、田村和之先生を講師として自治研セミナー・地方自治体の法実務セミナー「行政法の基礎を学ぶ」を4回開催しました。これは2022年も引き続き開催する方向で検討しています。ぜひ、ご参加ください。読書会という企画も立ち上げました。白藤博行ほか編著『デジタル化でどうなる暮らしと地方自治』(自治体問題研究社)の読書会です。広島県外にいる執筆者の方にZOOMでご参加いただきました。広島県知事選挙に合わせて、『広島県政白書 これでいいのか 広域化・効率化・イノベーション・自己責任 いのちとくらしをまもる広島県政へ』を刊行しました。ひろしまのいまの課題を網羅的に扱ったものです。
 2 ひろしまにおける憲法と地方自治の現状
 (1) 2022年も広島自治研は以上ご紹介しましたさまざまな取り組みを続けていきますが、 これをどのような観点から取り組んでいくかです。
これまでもそうだったのかもしれませんが、私には、これまで以上に日本国憲法が軽んじられているというか、もっといえば、ないがしろにされているように思えます。
 (2)@ これから緊急事態宣言が再び発令されるのかどうかわかりませんが、かつての緊急事態宣言では、権利制限に伴う補償はだれの責任なのかは不明のままでした。権利制限を飲食店のみに限定しそこに補償をするわけですが、それは恩恵的処理にすぎません。補償すらされない大多数がいるのですがそこに目が向けられることはありませんでした。ひろしまでも同様の状況にあることは、広島自治研の事務局会議や2020年に広島自治研が主宰した市民講座でも報告がありました。
A 「黒い雨」訴訟第1審そして控訴審で原告は勝訴しましたが、広島県と広島市は控訴、上告するか否かを国と協議し、控訴しました。被爆者手帳の交付は法定受託事務でありますが、控訴するか否か、上告するか否かは法定受託事務ではなく自治事務です。被爆者手帳交付と「黒い雨」訴訟で控訴あるいは上告するかの事務を一体と見るべきではなく、国と協議する事項ではありません。広島県と広島市が上告を断念したことはそれとして評価すべきでしょう。ところが厚労省は新聞報道によると被爆者手帳交付要件に疾病要件にする意向だそうです。被爆者の置かれた状況からすると疾病要件を付すことが何を意味するのかが想像できないのかもしれません(想像しようとしないことも許されないと思います)。基本的人権の保障がないがしろにされている一端がここにあります。
 (3) 基本的人権が十全に保障されていない状況にある一方、他方で、デジタル化は着実に進んでいます。マイナンバーカードをもっていると接種証明が容易に取得でき、さまざまな給付も受けやすくなります。私たちはマイナンバーカードとそれによる「利便性」を手に入れる代わりに、私たちの情報を提供することになります。提供する先は国や地方自治体だけではありません。民間事業者もそれを入手することができるようになります。そこではプライバシーや自己情報コントロール権という憲法が保障する権利は省みられることはありません。
個人情報は地方自治体が独自の工夫で保護をしてきたものの一つです。個人情報保護の最後の砦が地方自治体が行ってきた独自の創意工夫でしたが、これが「2000個」問題として喧伝され、地方自治体の創意工夫を問題視する雰囲気が作り出されました。その後、個人情報保護法の一元化法、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律が、デジタル関連の法律とともに成立しました。情報の収集・利用・提供の中央集権化がすすめられたわけです。情報の収集・利用・提供の中央集権化は、行政事務処理のそれにつながります。事務処理の「標準化」は「効率化」のために行われるのが常です。地方自治体の事務処理をより中央集権化するためには、支配管理しやすいように「標準化」が強く要請されるからです。
行政事務処理の標準化を国が行い(事務の「企画立案」)、事務の「執行」を地方自治体が行う。ワクチン接種の事務処理過程がこれでした。これが常態化すれば、おそらく、地方自治体は企画立案能力を失っていくことになるでしょう。標準化された事務の「執行」が求められるだけだからです。「自治体は事務処理や個人情報保護において独自性=自治を喪失し、住民に対する行政責任を手放していくことに」なりかねません(本多滝夫「自治体のデジタル化と地方自治」住民と自治697号)。行政事務処理の標準化は市場にも歓迎されます。誰もが使えるようになるからです。そうすると、行政事務がたやすく商品化されることになり、行政から切り離された事務を民間が処理することになります。これが市場化であり、民営化です。市場化・民営化された事務処理は、住民がコントロールできないところ、憲法の規律がほとんど及ばないところ、で行われます。住民は、民間事業者が作成したカタログやメニューの中から商品=行政サービスを選択しなければならなくなるわけです。そうすると、私たちは主権者でもなく、住民でもなく、ただ消費者としての存在になってしまいます。こうなると地方自治も国民主権もないがしろです。
 (4) この間の内閣総理大臣は「敵基地攻撃能力」にこだわりを見せてきましたし、いまも見せています。広島市が制定した平和推進基本条例はこの問題にどうこたえるのでしょうか。日本国憲法の平和主義もないがしろにされています。この平和推進基本条例の制定過程で、議会=民主主義という素朴な民主主義観あるいは意図的にこれを混同させた民主主義観による民主主義の軽視もありました。
 3 2022年の広島自治研の課題
 ひろしまも含めたわが国で憲法がないがしろにされている以上のような状況を変えていかなければなりません。被服支廠の解体・存続をめぐって2000を超えるパブリックコメントが出されましたし、平和推進基本条例についても1000を超えるパブリックコメントが寄せられました。これはひろしまを変える契機になると思いますし、同時にこのような経験を一つ一つ積み重ねていくことで(権利を行使する経験をすることが大事なのです)、ひろしまの政治・行政を変えることができる(住民自治)と信じる力になっていくと思います。
広島自治研の存在理由は、会員の皆さんとともに憲法がないがしろになされている状況を丁寧に一つ一つひろい上げて、ひろしまの県政や市政の問題点や課題の解決に取り組んでいくことだと考えています。今年も、この課題に取り組んでいきたいと思っています。会員のみなさんには、市民講座、ひろしま自治体学校はもちろんのこと、セミナーや読書会の企画などにぜひ参加いただき、会員のみなさんとの対話を通じて、以上の課題に取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いします。
 

2021年新年の理事長あいさつ

  あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
緊急事態宣言 
 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県に対して、緊急事態宣言が、1か月程度を目途に、1月8日に発出されるようです(2021年1月5日現在)。広島県では新型コロナ感染症の新規陽性者数が、昨年12月11日に114名、12月17日に140名、そして、12月25日には141名となりました。人口当たりの新規陽性者数が全国2番目となったこと、そして、広島医師会が、医療崩壊が始まっているとの呼びかけをしたとの報道に接したときには、この先どうなるのか心配になりましたが、広島県を含めた中国地方の新規陽性者数は少しずつではありますが減少しています。
私たちのところには
 このようにグラフや数字で見えてくる新型コロナ禍の現象はわかりやすいのですが、新型コロナ禍に係る政治と社会の現実態の分析はそう簡単ではないように思います。新規陽性者数や医療崩壊という事柄について私たちは報道でよく知っています。ところが、これ以外の事柄が私たちのところには伝わってきていないような気がしています。
研究所の理事会
 広島自治体問題研究所の理事会が昨年12月18日に行われました。そこで、理事の方から、飲食店を含めた中小企業の事業者の現状について教えていただきました。首都圏における飲食営業の窮状は報道を通して知っていました。広島県では、そこまでひどくはないのだろうと勝手に推測をしていましたが−広島県の中小企業の窮状はSocial Mediaでは周知のことなのかもしれません−私の推測は間違っていました。
コミュニケーション
 ともかく、ステイ・ホームやテレワークが推奨され、職場の同僚と、あるいは、ご近所の方とも無駄話・与太話・とりとめのない話などもできず、コミュニケーションがとりづらくなっていることとも相まって、わたしたちは断片的にしか情報は得られず、新型コロナ禍の人権侵害の現実態が総体として見えてこないような気がするのです。
人間が人間らしく生活
 広島自治体問題研究所は、新型コロナ禍のときだけではありませんが、人間が人間らしく生活できていない現状を一つ一つ丁寧に取り上げていき、それを総体として把握し、社会に発信していくことが求められているのではないかと思うのです。今年は、この課題に取り組んでいきたいと思っています。
 ひろしま自治体学校
 ひろしま自治体学校が1月24日に開校します。ここでは、藤原秀文さん(広島県民主医療機関連合会)に「広島県地域医療構想と国保単位化後の動き」、今谷賢二さんに「広島県の学校教育の現状と課題」、河上暁弘先生(広島市立大学)に「憲法と地方自治−コロナ時代の平和・新自由主義・改憲問題の視点から−」というテーマで報告していただく予定です。ぜひ、会員皆様にご参加いただき、広島県が抱える様々な問題を議論し、課題を共有したいと考えています。
課題を共有
 私たちが課題を共有し、その解決に向けて議論をすることで、県政や市政の問題点や課題が明確化すると思います。
 

2020年 新年のあいさつと理事長就任のあいさつ

  新年明けましておめでとうございます。ことしもよろしくお願いします。
新年のあいさつと理事長就任のあいさつを兼ねて、ご挨拶させていただきます。
全国自治体学校広島で開催
  今年は、7月11日から13日にかけて、自治体学校がこの広島の地であります。自治体学校は、全国から地方議員、自治体職員、住民などの皆さんが一堂に会し、各地の地方自治に関わる問題について学習する場です。1958年から続く歴史と伝統のある学校です。
 昨年は静岡で開催されました。水道事業の民営化、辺野古新基地建設、全世代型社会保障と介護保険の問題、幼児教育・保育の無料化、原発問題、大規模災害といった問題を参加者の皆さんと学習しました。今年、広島で行われる自治体学校でも、みなさんに関心を持っていただける様々なテーマを用意し、参加者みなさんと楽しく真剣に学んでみたいと思います。ぜひ、ご参加ください。
地方自治体の施策の公共性の認識
 さて、広島県内では、この間、大規模な公共事業や、事務事業の民営化・民間化・広域化(統合化)がすすめられてきました。だれのための公共事業なのでしょうか。何のための事務事業の民営化・民間化・広域化なのでしょうか。広島県と県内の地方自治体の施策の公共性(=われわれ広島で生活している住民にとって説得的なあるいは納得できる理由があるのか)があらためて問題となっていると思います。とはいっても、広島で生活する私たちの間で、このような問題意識が共有されているとは必ずしも言えません。この要因はいろいろ考えられるとは思いますが、このことはさておき、問題を共有するために、まずは、友人と、家族と、地域で、職場で、つまり、日常生活の中で、私たち一人一人が困っていること、悩んでいることを、可能であれば、それを政治や行政と関係づけながら、語り合うことが大切なのではないかと思っています。
「政治・行政を変えることができる」
 そして、次に大切なことは、私たちは、いまの政治と行政のありようを、自らの手でいつでも変えることができる、と信じることだと思います(私は、「語り合うこと」、そして、これを通じて「政治・行政を変えることができる」と信じることができる社会が民主主義だと思っています。)。
 そうはいっても、基本的人権の尊重と平和主義を変えてはいけません。
被服支廠の解体・存続をめぐって 
 被服支廠の解体・存続をめぐって2000を超えるパブリックコメントが出されたことに注目すべきことではないかと思います。政治・行政の側は、パブリックコメントの賛成反対の割合といった数値をあれこれ解釈するのではなく、また、そこに書かれたコメント内容のみを見て判断すべきではないでしょう。被服支廠を残すことあるいは解体することが、コメントしていない、そして、投票もしていない将来世代の声に耳を傾けていくことも大切なのではないでしょうか。
戦争のことを語り継ぐ
 そして、第2次世界大戦から75年が過ぎ、戦争のことを語り継ぐことが難しくなり、わが国に戦争があったということすら実感できる場も少なくなりつつある中で、被服支廠という存在が、将来世代にとってどのような意味な持つことになるのかということにも、思いも巡らすことが大切な気がします。
 以上のようなことを、様々な分野で活躍している皆さんが集まって、語り合うという場に自治研がなるように取り組んでいきたいと思います。今年も自治研へのご支援を宜しくお願いします。
                             山田健吾
 

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