広島自治体問題研究所
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2019年11月号 読者ページ

 (2019/10/23)
 
目次
事務局として気になった記事にコメントを載せます。一緒に読み合わせしましょう。あなたの感想や意見もお寄せください。
●特集● 都市再編時代の再開発
•アベノミクス都市再開発のいま (岩見良太郎)

 今多くの都市の再開発を正当化すると名目に、イノベーションだとか、コンパクトシティー化、公共施設再編という言葉で、一見財政支出は不問にされています。ここで行われたものが、地域全体のバランスある発展を基本に組み立てられたものであるとの装いを、立地適正化計画と掲げています。しかし、これらの開発は、「全体最適」という口実によって、「個別最適」を犠牲にするものであり、「選択と集中」政策の言いかえでしかないのです。青森、富山での実践結果が物語っているように、最初は大きく取り上げられますが、時間の経過とともに地域全体が崩れていくのです。
 まちづくりは、何よりも個々人の生活圏、身近な地域における住民自治から出発しなければならないのです。

•東京「企業主権」で進む東京の再開発 (遠藤哲人)
 いま東京でマンション建設がいままでのまちづくりと一変した民間業者の主導で行われている実態が報告されています。かって美濃部都政時代に住宅建設に立ち向かった計画が存在しており、これらがいま、民間主導の下で、大規模な高額者のための、まちづくりに変えられて、一般人が立ち入れなくなっているようです。大企業の事業掘り起しから虫食いの再開発、かって自分たちが立てた計画を、民間業者が取り替えた計画承認の立場に転換している行政の姿など、市民・住民犠牲の再開発の横行に対し、今こそ、鼓した人々が声を上げ、組織を作り、議会、市民運動、労働運動の共同で、道を切り開くよう呼びかけています。参考例として、徳島市新町西区での再開発取りやめの運動が紹介されています。長くて粘り強いそして幅広い運動は勇気を与える経験だと称賛されています。
•さいたま市 大宮駅周辺で急速に進む巨大開発計画 ─首都圏広域地方計画・スーパーメガリージョンを追い風にして─ (渡辺繁博)
 2都心4副都心構想と、大きな呼びかけですが、これが政令指定都市化に向けたさいたま市の掲げたものでした。ここで述べられている都市開発は、国の国土形成計画を取り入れて、市民の目を上側に注げて、飾り付けられ、町内会長までも、その推進組織に組み入れられたようです。大宮周辺地域戦略ビジョン、約190haもの広さを「公共施設の再編による連鎖型まちづくり」と、すごいビッグアイデアだと称賛した県知事の話も、気に留めておきたいものです。しかし、経済誌が、皮肉にもこの計画の欠陥を指摘している記事を掲載しています。まったく企業の利益を優先し、高い価格を市が負担するはめになっているようです。大きな構想を打ち上げることにより、さいたま市の財政負担は莫大な額になり、住民の生活には大きなギャップが生まれていることが紹介されています。この開発事業に対応した学校、保育所、公園、児童館や公民館などの整備計画を市は全く持っていなかったというのです。国の大言壮語に踊らされることなくしっかりした社会動向に対する見通しを持ち、市民の願いを聞き取り、美しく・安全で快適な市民のよりどころとなる駅周辺整備となるよう願っています。
•川崎市 一体誰のためのまちづくりか 鷺沼駅前再開発に伴う区役所・市民館・図書館の移転に反対する住民運動 (小久保善一)
  川崎市宮前区の区役所移転が、住民の声を無視した形で進んできたようです。この論文には公共施設再編整備計画書の作成について述べられていませんが、多くの委託事業の中に、このような大きな施設があるとは、またこれに付随する市民会館・図書館などを新しい土地に移すことにより、ドミノ式にその跡地の再開発が描き出されるのでしょう。大きな金が動く中で、市民生活の向上や、市民の声は受け取られなくなっていく、川崎市政の変化が読み取れました。区民の声10%しかない計画を広げようともしないくせいに怒りを感じました。まさに、現実は、事業者と市があらかじめ事業計画を決めて、市民が全容を知る前に短期間のうちに決定・実行しているように見える。とはどこかで聞いた言葉ですね。
•徳島市 無謀な再開発をひっくり返したあきらめない市民自治の力 (加戸 悟)
 徳島市民は、「住民投票条例」を作り上げている町なのですね。過去の経験からあきらめない市民自治の力が、今回の無謀な「新町西再開発の白紙撤回」の運動を支えたとも言えるのでしょう。市民の怒りをコツコツと広げる活動の経験は、時代を超えて活きていくものなのですね。このような体験を作り出すことがいま求められているのだと思います。またこの間の裁判闘争、市長選挙などで核となった出来事に力を集中していることもわかります。
 徳島市の住民投票署名での、受任者作りで、3000人の数を集めきることができることは、「市民の力」の根拠であり、このような活動を市民運動の起点として広島県でも作りたいものです。だけどこの開発に徳島県が同意をしていないとは、これの経過が知りたいものです。

•神戸市 「神戸市都市空間向上計画」について (小田桐功)
 この論文で「立地適正化計画」の矛盾点が明確に表しています。行政・国がこの計画の本質を明らかにせず、独善的に執行している意味が分かります。そもそも都市計画法の理念は、「都市の健全な発展と秩序ある整備をはかり」「農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活および機能的な都市活動を確保すべきこと」であるのに対し、「立地適正化計画」は、人口減少社会の下でも、民間活力を謳い、駅前開発の参入事業者への補助金対策など優遇策を設け都市再開発を最優先したものとなっており、住民福祉の向上を謳う日本国憲法の精神とは相いれないものです。ここの神戸市の計画案に対する緻密な点検活動を参考にして、各地の計画をチェックしてください。市民への広報活動はどうであったか。基準となる駅から徒歩20分の適用が市民生活や地域の特性に合っているのか、人口減少の推移年が20年か50年先なのか、地価の変動がみられるかどうか、被災対策と整合性があるかなど、具体的な声を集めてください。
•滋賀県 滋賀県内の立地適正化計画調査結果から見えるまちづくりの課題 (瓜生昌弘)
 滋賀県自治研からの報告であり、広島県としても参考にしたいものです。そもそも立地適正化計画の持つ、いわゆるコンパクトシティづくりの計画が、居住誘導区域や都市機能誘導区域を設置し、人口増加に伴いはらんでいった市街地を人口減少に対応して縮小させていくという狙いを持っています。県内の作成状況を概観して述べられていることは、誘導区域設定率が40%を超えている、。将来人口を増加する市町は少なく現状維持ないし、減少する方向である。計画内で、居住区域外のことがあまり触れられていない。ことが明らかになっています。この計画が既存の交付金事業の補助率がかさ上げされる仕組みとなっており、そのことが計画策定の目的になっていることが特徴です。この計画を批判するうえで、この計画自体がまちづくりの計画であり、本来のまちづくり手法から点検する4点があげられています。神戸市の報告ととともに参考にしてください。
第32次地方制度調査会「中間報告」を読む
 この調査会は2018年7月5日に発足し、内閣総理大臣が『人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを超える2040年ごろから逆算し顕在化する諸課題に対応する観点から、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスその他の必要な地方行政体制の在り方について」諮問したものの中間報告に対する意見の紹介となっています。
•行政合理化論が団体自治や住民自治を越える? (平岡和久)
 第32次地方制度調査会の中間報告は、人口構造の変化を地域類型化し5つを提示し、地域類型を絞る施策を出しており、町村会から厳しい批判が上がっています。類型化でもって画一的な方策を市町村に押し付けることは現に戒めなければなりません。二つ目は、2000年代以降構造改革、行政改革によって削減された地方公務員をさらに削減することを前提にすることで課題設定がされていることです。三つ目は、緊縮政策を前提とした上で、地域や組織の枠を超えた連携を進めれば、公共部門の責務や団体自治・住民自治を破壊し、超えるべき対象となることです。今後の焦点は、市町村の自主性を尊重するよりむしろ、圏域単位の行政を押し付けようという議論に注意することです。
•ステルス化した「圏域マネジメント」論と「トロイの木馬」 (本多滝夫)
 調査会で圏域マネイジメントの批判が多く行われた結果、中間報告の言葉が@ひとりに着目した方策、Aインフラ・空間に関する方策、B技術を生かした対応を行うための方策と変えた言葉で表現されていますが、事務局を担う総務省自治行政局はすでに、合併協議会をモデルとした、中心市の市長を会長とし、地方議会議員、有識者をも構成員とする『圏域運営協議会』を立ち上げ、行政基盤を新たに構築する法制化を創ろうとしています。圏域マネイジメント論を隠し、そしてその舞台裏では『トロイの木馬』の設計が進んでいるのです。
•小さくても輝く町村自治の発展を (藤澤直広)
 「地方自治」の本旨を国がたがえたのが今回の中間報告です。今回は『圏域行政』を掲げ、「自分たちのまちのことは自分たちで考え、行動する」ことから切り離そうとしています。住民福祉の増進を図るという地方自治体の目的達成は、「人」でありAIが取って代われるものではないのです。滋賀県日野町には、毎年、20数校3000人以上の生徒たちが、修学旅行などで農村生活体験をやっています。自然に触れ、人々と交流し、田舎に残っている助け合って生きる社会を体感します。離村式では『もう帰りたくない』という発言がありますが、このような心の交流は「AI]ではできません。
•風穴を知っていますか?─第6回全国風穴サミット in東京─ (傘木宏夫)
 風穴とは、山の地滑りで石が積みあがった斜面などで、その隙間から自然の冷風が噴き出す場所のことです。このような自然現象の発見を通じて、心行きかう交流を全国に呼び掛けています。
•書評 岡田知弘著『公共サービスの産業化と地方自治 「Society5.0」戦略下の自治体・地域経済』 (岡庭一雄)
 この本は、既刊「自治体戦略2040構想と地方自治」(自治体研究社)において問題点を指摘したことに引き続き、各自治体で具体的に運動を起こしていくために「公共サービスの産業化」を体系的に学ぶことのできる教科書として活用してください。
●連載●
•おんなのRun77 秩父のFMラジオ局! 街も人も元気にしたい (磯田恵美/山中優子/出浦ゆみ)

 地域の人たちが出られるFMラジオ局が秩父に誕生したとか。この局を作る11人のスタフの心意気が楽しみです。「人と人、地域をつなぐメディアが必要です」
•@NEWS 東京五輪 晴海選手村土地投げ売り住民訴訟原告団見解発表 (淵脇みどり)
 東京五輪の問題で、東京都知事が、晴美選手村の土地を建設業者に投げ売りし、業者による跡地にマンションとして売り出していくに協力したことを追及しています。広島アジア大会の選手村も同じような売り方がされています。このような都民の財産を企業集団に売り出し、儲けを保証するやり方は、まさに産業化した自治体行政ですが、都民の利益を放棄しているのではないでしょうか。
•子どもの未来図 第8回 子どもの貧困と世代間連鎖 ─生まれた家族で子ども格差があるのはしょうがない?!─ (浅井春夫)
  乳幼児期から低年齢児童期における貧困生活は、学習的知的な主体的体験に乏しい暮らしになりやすく、そうした@感情・意欲を育む格差を生み、A認識・操作能力の形成の格差を広げ、B努力という具体的な行動の格差に連動し、結局はC希望(人生へのチャレンジ権)を生み出す格差へとつながっています。
私たちは、貧困の連鎖を放置しないで、どの時期にどのような支援と権利の保障をし、政策的な対応をしていくのかを真摯に探究しているのかが、国及び私たちに問われているのです。

•行こう Zoo-Zoo-Zoo 第5回 動物園の運営費 (森角興起)
 動物園の人件費の在り方が、動物園に参加者にとってよく理解できるようになることが、もっと必要ではないのではないでしょうか。動物の命を守っている人の生活・余裕により、その運営は大きく格差が生まれると思うからです。参加者は、動物園では生きた動きが目に巻きつけられるものであり、その管理され方との共感がすぐ反映していくでしょう。
•おいでよ44 酒々井町 (小坂泰久)
•Jつうしん
•史跡さんぽ53
•編集後記

2019全国自治体学校参加者位置図( 2020年7月11日から13日広島市で開催されます。)
DL:73.pdf

(2019全国自治体学校参加者位置図.pdf)
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