広島自治体問題研究所
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2022年5月号読者ノート

 (2022/05/20)
 
編集局より
日本国憲法施行75年。昨秋の衆議院議員総選挙の結果を受けて、改憲への国民投票が現実味を帯びてきました。日本国憲法の一条一条にこめられた、個人としての人権の尊重と付箋平和への決意、そしてそのための権力のしばりが狙い撃ちされようとしています。国民投票制度も、公平性から見て多くの課題を残しています。主権者として憲法改正の論点を検証します。
 
目次
◆直言 今こそ「保育とは何か」という観点を 馬場紘平

 おむつを持ち帰る枚数が1枚になる、この感動を保護者として子供の成長が目に見える形で体験されています。私にはその記憶がないのですが、このこと一つとっても「保育とは何か」をみんなで考える場にしてほしいものです。
●連続企画● 「新型コロナ」から日本の社会を考える 第23回 コロナ禍が問う「図書館の自由」─ホームレス・女性・非正規雇用という視点から 山口真也
 図書館へ入るのに身分証明書や、料金を払ったことがないことに気づかされました。図書館の自由宣言で歌っている、基本的人権の保障としてある、図書館。その自由を守っている非正規職員の方々の身分の不平等を私たちは気づかなければいけないのです。
 そもそも、路上生活者の生活が図書館の周りで会った時、彼らに取って大きな生活保障の基盤に違いありません。その図書館が、「路上脱出・生活SOSガイド」などを発行していたとは、また、この図書館を支えている女性差別・ジェンダー不平等を、コロナ禍で、一層明らかにされ、この解決が求められています。これまでも、やりがいと引き換えに低賃金を多くの女性に押し付けたまま、薄氷の上を歩くように、図書館の自由はかろうじて維持されてきたことを、私たちは認識するべきですね。

●特集● 何のため、誰のための憲法「改正」か
自民党「日本国憲法改正草案」と現在の改憲論議 愛敬浩二

 自民党の憲法改正に向けた出発点は、自民党が結成された時からだと思いますが、10年まえに「日本国憲法改正草案」が発表された2012年4月27日を見てみたいと思います。この時点で、自民党は、自由に自分たちの本音を述べたようです。問題点として@保守的・復古的改憲A平和主義の根本的改編B人権保障の弱体化C統治機構の「微調整」D立憲主義の形骸化が、あるようです。この改憲草案を支える憲法思想は、
●日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち国民統合の象徴である天皇を頂く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
●我が国は先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
●日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重することとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
●我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
●日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここにこの憲法を制定する。と前文となっています。
 この前文の最大の狙いは「利害・価値観を異にする諸個人が自らの自由・権利のより良い保障のために社会契約を結んで政治社会(=国家)を形成し、自らの自然権の一部を政府に信託する)という「社会契約の論理」を否定することになります。まさに人権保障の弱体化と立憲主義の形骸化に進むのです。
「国防軍」と緊急事態条項が明記されたらどうなるか 纐纈 厚
 2018年3月25日開催の自民党大会で、改憲4項目案が公表され「国防軍」の名称を避け、「自衛隊」の憲法明記に切り替えています。憲法第2章は、かって日本が行った侵略戦争の発動として戦争の手段を取らないことを宣言したものです。
 しかし自民党案では、直ぐ後の2項で、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」との断りを入れて。侵略戦争の発動は放棄するが、自衛権の発動としての戦争はその限りないとしているのです。
 現行憲法がいかなる戦争も否定しているのに対し、草案は自衛のための戦争を肯定しているのです。
 現在、自衛隊は自衛隊法という法律によって、その組織を認められています。ただ、日本国憲法では軍事や軍事組織、ましてや戦争行為などを全く想定していません。
 自衛隊が「国防軍として憲法に明記されることは、同時に、武装による自衛権行使を前提とする安全保障政策を一層強化しようとするものと言えます。
 日本をもう一度、「戦争のできる国家」としていいのでしょうか。
 もう一つの国家緊急権は、緊急事態を理由に憲法を停止する措置で、憲法の最大の任務、人権の擁護を停止させることになります。人権の停止状態に置くことは、近代憲法の役割を根こそぎ否定することです。
 基本的かつ有効な災害対策は、災害が起きていない平時から防災訓練や避難訓練などを繰り返していくことが大切とされています。大切なことは、これまで以上に具体的かつ実践的な護憲運動の展開が不可欠で、日米安保や自衛隊に頼らない平和づくりを紡ぎ出すことだと思います。護憲運動が最大の抑止力になるはずです。

「危機」便乗・改革幻想の中の地方自治改憲論 河上暁弘
 日本国憲法の三大原理と「地方自治」の関係
日本国憲法の三大原理を実行あらしめるうえで決定的に重要なのが「地方自治」で、国民・住民に最も身近自治体レベルにおいて保障・具体化されるもので、またそれら諸原則が侵害された場合の被害は自治体レベルにおいて最も早く深刻に現れるからです。
地方自治の本旨」が抽象的・不明確
近年の地方自治をめぐる改憲構想が、政党や地方自治体から出ていますが、「地方自治の本旨」という文言が抽象的・不明確ではないかという批判がありますが、この文言を改め、住民自治、団体自治、国と地方の適切な役割、補完性の原理等という具体的な文言に変えることが必要という意見もあります。
具体的な案の問題点
ただ、そうした中から出てくる具体的な案を見ると、

●「地方自治の本旨」規定を削除し、地方自治を「住民に身近な行政」に限定したり、
●外交、安全保障といったものを「国の役割」とし、地方自治体の役割を限定することが意図されている可能性をもっています。そして、
●近年の「有事法制」の整備・確立などと相まって、軍事協力への自治体の動員、自治体の下請け・末端機関化をもたらす危険性があります。
●また、補完性の原理にしても、自治体の「全権限性」を前提とした権限配分における自治体優先の原則という文脈だけではなく、自助優先論・自己責任論を前提とした公助後退・福祉切り捨て・自治体丸投げ(国の撤退)といった新自由主義的改革推進の論理として展開されてきたこともあり、その内実が問われます。
●また、自治体への権限配分や地方財政・財源の充実化そのものは憲法を変えるまでもなく法律・予算等によって可能であることです。

このことにより、新自由主義的改革の徹底化のための改憲構想だと言えます。憲法改正よりも、
憲法理念の実現・実行のための日本の政治・行政の大改革を!!!
緊急事態条項とは、
@不当な目的で発動されやすい・A期間が無限定に延長されやすい、B過度な人権制限が起きやすい、C司法救済の困難性という致命的な問題点があることにまずは格別の注意が必要です。
 なお日本国憲法は「緊急事態」を想定していないというのではなく、例えばどのような「緊急事態」(大災害や軍事攻撃等)にあっても、憲法の停止・人権の包括的制限といった「国家緊急権」の行使及び軍事力の行使禁止し、かついかなる場合においても事前または事後の司法救済の道を閉ざすことを前もって認めることはしない という選択をしていると考えるべきでしょう。

国民投票法制定15年 国会が積み残す課題と市民の役割 南部義典
 憲法改正における国民投票の実態が、「現行法のままでは国民投票が執行できない」に尽きることが分かりました。又この投票自他の持つ、既存の選挙との大きな違いとその対応が、いまだ明確になっておらず、これらにたいし、一足飛びに行うと、反国民主権、非民主主義的な政治癖にはかならないことも分かりました。キチンと行政事務を行うことが、課題ですね。 
憲法学習と住民自治─地域と学校で主権者を育てる重要性 宮下与兵衛
 憲法の基礎は国民の政治意識の向上が成長しているかどうかだと思っていました。
 今憲法9条に対する認識が、改憲派から批判されていますが、このような言葉に若者が同調しやすい現状に危機感を覚えます。
 世界の若者は小学校時代から政治教育が行われているとか、それらが一国の大統領選挙でも、生かされている時代になっています。
 それに引き換え日本の若者の政治意欲の未熟さは46年間お政府の、教育に対する取り組みから生まれているとのこと。大きな弊害になっているのですね。
 主権者意識の向上は体験から生まれているとのこと、ここで長野県竜野高校での憲法学習が載っていますが、生徒による主権者教育として40年近く行われているとか、この活動により、地域づくりの主権者が育っているのだと思います。  
 文部省の行おうとしている人材育成ではなく、生徒の街づくり参加も「人格の完成」と「平和で民主的な国家及び社会の形成者」、つまり主権者の育成になってほしいものです。

憲法改正国民投票におけるメディア規制の必要性について 本間 龍
 憲法改正の国民投票時の、マスメディアの規制は、今現代の日本のマスコミの実態を良く知る筆者から見れば、国民が様々な情報に接して塾路する機会が失われる危険性が大きくなるとの、これこそが、国民投票における最大の問題点であり、早期規制が図られなければいけないのです。
 今回のロシアのウクライナ侵攻で改めて明らかになった「情報戦」を私たちは深く考えておく必要があります。  
 また、日本国民の3割は保守で(自民党支持)、2割が革新(野党支持)で、後の5割は無党派(浮動層)です。このことでこの浮動票をどう扱うかが大きな課題なので、自民党の広報が電通であるという実態が、非常に大きいのです。このことに早く護憲派の人々も見直さなければいけませんね。

自治体DXの争点@ 自治体情報システム「標準化」の問題点と課題 久保貴裕
 自治体情報システム「標準化」は、自治体独自の住民の要求に基づく独自施策の抑制にはかざるを得ないという課題に、私たちは真剣の考える手段を持たなければいけません。
 行政が国の基準で測られること自体、民主主義の住民自治の本旨に反するものであり、
 急速な標準化でもって作られたシステムには大きな欠陥が生まれるのです。
 今回携帯スマホの通信が60時間も途切れたという事態が発生しました。これ自体今後同じような事態が起きないとは言い切れないのです。特に電波事業の不安定さは、この間の新自由主義経済でもってブラックボックス化されている課題が、どんどん出てくると思われます。
 「標準化」する20業務でこれ以外は、自治体の責任で行う業務と、一方的に国が責任を負わない事態が生まれかねません。多くの住民の生活状態の中で、責任をもたないというこの業務は、時代遅れの再来になる恐れがあります。この業務を請け負うベンダは「標準仕様」の身に力点を置き、オーダー・オプション業務での破格の請求を行っていくことでしょう。
 今回システムの整備で4点の指摘がされています。自治体クラウドの性能移管が、評価されていませんが、大きなブラックボックスがあるのではないでしょうか。これを極めたから直ちに発信されるのがいいのではないでしょうか。この作業に主権者である住民や業務担当者の意見を十分に聞き反映されることを希望します。

[連載]
人つながるM 高知県へ移住し、地域の山を育てる「自伐型林業」に取り組む 滝川景伍

 「自伐型林業」とは環境に配慮した持続可能な林業経営を目指すもの。地域の山に根ざし、必要最低限の機械を使って、出来るだけ山に負担の少ない方法を選んで、100年、200年と続く山づくりをしているそうです。
 小さな林業は災害にも強い、山の恵みの多様な提供方法やサービスが今後必要です。まずは地域の山の木で炭の販売を行い、製材やモノづくり、林業観光にもチャレンジしたいそうです。
 林業の世界にもこれからもっとイノベーション(物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。)が起こる分野だそうです。

おきなわ定点観測 第2回 軍事基地強化が進む沖縄─伊江島のこと─ 関 耕平
 今ウクライナの攻防で、沖縄基地は深刻な様相を示しているようです。また関さんも危機感を覚えるそうです。軍事基地沖縄が持っているこの危機感が、岩国にもあるのではないでしょうか。宮古島が自衛隊基地として工事が進み基地に植えられているハイビスカスが可哀想だと語っています。このことは本土にいる私も感じぜぬにはいられません。
検証 津久井やまゆり園事件を人権の視点から考える 第8回 死刑は何事も解決しない 寺中 誠
 死刑存続の国とない国での違いが語られています。この犯罪が障害を持った人々の存在を頭から否定する犯人の主張に多くの人々が怒りを示す一方で、逆にその意見に一部共感するような発言の登場を許すことになったのです。
 しばしば指摘されるヘイト・スピーチによる二次加害が報道の大きさととも相まって社会全般に広がったのです。
 また確信犯のうちでも、信念に基づき大きな被害を引き起こすものを、犯罪学では「ミッション犯罪」と呼びます。2011年7月に、ノルウエーで起こったミッション犯罪は、一時国内に死刑復活の動きがあったようですが、死刑廃止国である同国では、拘禁刑の上限が21年、さらにそれに加えて保安上の理由によって保安官措置が可能となっています。閣僚は「この事件によって政策が変わったり、死刑などの厳罰化が進行することは、むしろ犯人の要求に屈することになる」と指摘し、死刑復活や移民政策の引き締めなどを行わないことを言明したのです。
 刑罰の効果に依存する体制は結局、社会内にはびこる排除意識や次の犯罪につながる危険性に十分対応できていない人ではないでしょうか。

くらしと自治と憲法と 第12回 憲法13条幸福追求権の「個人の尊重」「公共の福祉」論と自民党改憲案 清水雅彦
 日本国憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定しています。
 自民党改憲案で、「全て国民は、人として尊重される」と変えていますが、「個人」として尊重されなくなるということは、「人」として扱われても一人ひとりの個性・考えまでは尊重されなくなることを意味します。
 個人として尊重されなければ、日本でさらに集団主義が強まる可能性があります。
 「公共の福祉」は人権と人権が衝突した場合の調整原理と考える学説が多数説になっていきます。「公共の福祉には「国家的利益」の意味はありません。其れなのに、自民党は「公共に福祉は分かりづらい表現だからという理由で、憲法学が積み重ねられてきた議論を無視して、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」という表現を使うことで意味まで変えてしまっているのです。
 つまり、自民党の論理からすれば、従来の人権の制約原理は人権と人権が衝突した場合に調整するというものであったのに、今後は国家が優先する場合に人権を制約することになってしまいます。
 デジタル改革関連法は、国民のプライバシー権や自己情報コントロール権よりも国家による国民監視と企業の個人情報利用を優先するものです。
 日本国憲法下では、これら法律は国民の権利・自由を制約・侵害する違憲立法であると主張することができます。しかし、自民党の改憲案が実現したら、これらの法律は「合憲」になってしまうのです。

シリーズ 地域発信 野草と歩む つちころび野起き 第3回 野草でつながる地域の交流 鶴岡舞子
 昨今の移住ブームを表して、今の社会変化の中で、「何を残したいか?」を問われている時代に入っているのではないか、ブームで入った人が、地域を好きになって長く暮らしてもらえるような人を増やせる取り組みや、選択肢がたくさんあることがより良いと思う。植物の中にも、外来種が多く生き残り、在来種がひっそり過ごす中、外来種の反乱で、これを除草剤で駆除するにあたって、在来種も一緒に駆除されていくような現象が、生まれていないか、見た目でなく、本質を見抜く力が試されているのか。野草の活用が地元ではなったことであり、移住してきた筆者の都会的センスでの活用を、地元もゆったりと見つめていかされてきた。野草の「摘み草のお店つちころぶがオープンしたようです。
BOOK REVIEW
ローカル・ネットワーク
Jつうしん

自治の風─静岡から 第1回 リニアと大井川の水問題 林 克
リニア新幹線工事中、命の水が毎秒2トン減るとの調査が出て、この水の完全復活工事が出来ないとのこと。地域にとってそもそも論であることに、JR東海は無視しているのか、環境アセスでの調査でこのような結果が明らかにされたことが素晴らしい。
編集後記
 
 

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