広島自治体問題研究所
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2022年12月号読者ノート

 (2022/11/24)
 
編集局
四日市公害ぜんそく裁判が結審してから50年。経済成長第一の政策の結果、環境破壊は公害という形をとり生物学的・社会的弱者に集中した被害をもたらしました。環境汚染は複雑で見えにくく、地域住民による科学的な検証とそのための運動・学習のネットワークが不可欠です。公害を教訓として環境基本法および個別法が制定され、国際的にもSDGsが提唱され維持可能な開発目標を掲げています。私たちは過去の失敗を正しく受けとめ、維持可能な内発的発展に進んでいけるのでしょうか。
 目次
◆直言 いまこそ、地方公務員の長時間労働解消を 重野幸介

 新型コロナ感染症拡大以降、全国で地方公務員の長時間労働が続いていることに、労働基準法違反であることの認識が誤解されており、すでに2年以上が経過した時点で、見直さなければいけませんね。最近の自治体DXのための業務の標準化は、地域の特性に沿った地方自治を破壊することが出ています。中には「行かなくてもよい役場に」などというスローガンを掲げる自治体が出てくるなど、密接であるべき住民と自治体の距離が広がろうとしています。
●特集● 四日市公害裁判から50年 公害から今何を学ぶか
 1972年の公害闘争が、多くの課題を環境破壊という形で生物学的・社会的ジャンク者に防衛闘争として立ち上がりました。それから50年国際的にSDGsが提唱されるに至っています。持続的可能な内発的発展に進む方向を学びましょう。
公害経験の継承を通じた協働のまちづくり─維持可能な内発的発展に向けて─ 除本理史
 公害での各地の司法上の紛争が終結したことで、公害患者と被告企業、自治体など様々な関係主体が、協働し地域発展を目指すという方向転換が期待され、持続可能な内発的発展に結びついた事例が綴られています。宮本氏の内的発展の「目的」「方法」「主体」をまとめています。この用語に関知してください。
 NPOとして団体として、「環境再生まちづくり」「脱炭素社会をめざして」と取り組みを起こしていることが、報告されています。
一方、公害紛争の中で、解釈の視点が立場によって異なり、それらの間の分断や対立が生じた影を、「困難な過去」と表現されています。このような地域での公害経験の継承に取り組むにあたって、重要なのは多視点性(多様な視点から解釈を許容しつつ、「過去」からの学びを促す姿勢)が重要だと言っています。公害経験の継承に正面から取り組むことが協働のきっかけになり地域の歴史を知り地域の将来を考える可能性を生むのです。

多視点性による公害経験の継承─倉敷・水島の公害資料館づくり─ 林 美帆
 倉敷・水島のコンビナートでの公害資料館を作るにあたって、「公害」を見る複数の視点、環境や人権、健康)があげられています。視点が複数になることで、ある視点に限定されることはありません、複数人で作り上げることで「みんなの歴史」となり、参加者が自分の歴史として語り出すという効用があるのです。水島の歴史が語られていますが、古くからの新田開発の歴史があるのですね。改めてこのような振り返りが必要ですね。
消えないPFOA汚染─大阪府摂津市からの告発 増永わき
 PFOAが、耐水性、耐油性に優れた有機フッ素化合物で、フライパンのテフロン加工など様々なものに使用されてきた。ダイキン工業の製作所周辺の畑で農作物を作り、非汚染地域の70倍もの検出があったのに、摂津市は全く動こうとはしていません。このようなことが今の社会でも残っていることに驚きを感じました。企業自治体の責任は、今からでも遅くなく、解消の点検を行ってほしいものです。
住民の学習をつうじた公害経験の継承 清水万由子
 1967年四日市公害患者9名がコンビナート企業6社に対して損害賠償訴訟を起こし、1972年伊都地方裁判所で米本清裁判長が下した判決が出されました。
 判決は、「人間の生命・身体に危険のあることを知り得る汚濁物質の排出については、企業は、経済性を度外視して、世界最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずべき」であるとして、国・自治体についても、「当時の国や地方公共団体が経済優先の考え方から公害問題の惹起などに対する調査検討を経ないまま、旧海軍燃料廠の払い下げや条例で誘致を奨励するなどの落ち度があったことは窺われる」としています。
 この判決文を契機に住民運動の大きな刺激になり、石油コンビナートの取り消しなどを起こした地域も現れたのです。これらの地域では住民が重ねた学習会が大きな力になっています。住民が学習会を通して獲得した主体性は、住民アイデンティティの核心にある地域環境(アメニティ)の価値も含んだものだったのです。今、このような公害地域での経験の継承という課題が自治体や公害被害者団体、大学などが公害資料館を設立し、展示解説、語り部講和、現地研修、公害資料の収集・保存・整理・活用などに取り組んでいます。公害の経験を通して確認された「価値」を地域において具体化し、現実のものにすることが、公害経験の継承であると考えます。先人から受け継いだわが町の環境をより良いものにして次世代に手渡していくための継承は、重要な意味を持つと考えます。

インタビュー 公害被害者救済から地域再生のまちづくり運動へ 森脇君雄・上田敏幸・傘木宏夫
 歴戦の勇者の思いを感じますね。公害という言葉がなかなか使えなくなっているとは、かって被害者の集団作りと、認定漏れになった人の補充闘争が残っているのですね。医師との共闘が、民医連が中心になっているようです。かっての戦いの分裂に労組があったとは、今は被害者中心に戦われているとか、公害という言葉から街づくり運動が生まれるとともに、語り部の継続が大切だとか。環境を監視することが、経済界からの圧力から消されないようにしないといけないし、原点に立った公害被害者運動を続けることが大切ですね。
資料 公害とそれに関連する主な出来事
 1891年っから2021年までの動きの中で、1946年の新憲法発布、1963年三島・沼津の石油コンビナート反対運動、1970年「公害国会」開催、1972年ストックホルムで国連人間環境会議開催。1974年大気汚染防止法改正など多くの系列が記載されていますが、2011年東日本大震災の原発被害に対する環境破壊がいまだ続いていrことに疎くなっていないだろうかと反省しています。
ZOOM IN 大阪・枚方市 市役所移転を止めた「市民の力」 野口光男
 枚方市の住民運動は、革新市政の経験から粘り強く市交渉と、学者を呼んでの学習会、議員団主催の全戸ビラ配布、毎週の考える会の事務局会議の継続など、優れた活動が目に入ります。一方の維新の会の無謀な予算増額、民間優先の活動に怒りを覚えます。又役所の住所変更は地方自治法第4条の特別議決という項目があり出席議員の3分の2の賛成が必要だとか。大型開発事業は、総事業費781億円が855億円に増額されるなど広島市の総合開発と同じことがされています。
FOCUS 医療を人質にマイナンバーカード取得強制 松山 洋
 マイナンバーカードの強制的取得に、医療保険制度をかますとは、河野大臣の智弱な発想だと、批判されています。これが及ぼす、地域医療の崩壊、認知症増加による忘れ放題、自治体での保険証発行義務の負担など、ようやく5割になったマイナンバーカード取得者数をどう見ているのでしょうか。
●連載●
人つながる(21) だれでも なんでも「アートスタジオ大山」─声を出せない人の声を拾う 尾曽越理恵

 素晴らしい活動場所だと感心しました、「表現は自発的なもので、その結果生まれる独自性を大切にした」という発想も、生活困窮者の集まる場での展覧会は、お互い引きつけ合うことでしょう。
くらしと自治と憲法と 第19回 日本国憲法前文の先見性 只野雅人
 憲法第2段落最後の「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から逃れ、平和なうちに生存する権利を確認する」と一節を改めて学びましょう。この条文を作るときの参考文案は「大西洋憲章」にあるとか、この条文に関する判例で、長沼ナイキ訴訟での札幌地裁判決が上がっていますが、高裁で平和的生存権には具体性がなく、裁判で主張することはできないと判断されています。この項目が全文にあり、個々の人権規定解釈の指針になる以上、憲法第3章が保障する個々の人権の問題として、その趣旨を生かした解釈を考えてゆくことは可能なはずです。75年前に制定された前文に盛り込まれた先見性ある視点をどう生かしてゆくべきかが、平和的生存権を宣言した「私たち」に問われているのですね。
検証 津久井やまゆり園事件を人権の視点から考える
 第13回 障害者権利条約日本審査の総括所見の意義 赤松英知

 障害者権利条約の締結国に対し、国連本部では、建設的対話と称して、この条約の実施状況の聞き取りが行われるのです。政府はもちろん、この条約に関係する団体からもこの会議に参加できるのだとか。この建設的対話から、今回津久井やまゆり園事件での政府の対応にも鋭く意見が述べられています、今後の不備に関しての進展させる方策が実施されることを期待します。
おきなわ定点観測 第9回 沖縄のメディア・ジャーナリストの矜持─2人の記者との出会い 関 耕平
 沖縄のジャーナリズムの質の高さがあげられています。旧陸軍幹部が行った沖縄県民徹底抗戦を指揮した幹部を、自衛隊員は18年間集団参拝し敬意を表明していたとは、驚きです。又硫黄島に射撃訓練場を作り米軍に使わすことを、「島を外国に売り渡すのか」と批判したジャーナリストの言葉は、私も反省すべきことです。
公民館における出会いと学び 最終回 第6回 住民に寄り添いともに学びを創る職員 田中純子
 岡山市の公民館職員の働きで、地域を見つめ、住民に寄り添い対話を重ね、住民とともに学びを誘導し実践につなげていくためには、職員自身が学び続け、経験の中でその専門的な力を育む必要があることに気づかれたのでしょう。非正規職員では出来ないことですね。
シリーズ 地域発信 耕作放棄地に挑み果樹園の再生を! 第1回 セカンドライフへの道のり 渡辺卓也
 大変なセカンドライフの出発ですね。それも無年金・未収入で借家住まいとは、奥さんも大変でしょうね。この点での対話も大変だったことでもありましょうが、それまでの援農の体験の不純が、導いた行為でしょう。農業とは本当に苦しいけれど、その喜びをどう感じるかにかかっています。頑張ってください。
@NEWS お粗末な市長暴走の顛末 辻 よし子
 あきる野市長の暴走とは、本当に保守対決できる政治家がいないのでしょうね。独断での特養施設建設に関して、もっと静かに説得できなかったのでしょうか。目的と手段のかけ離れはなくしてほしいものです。
『住民と自治』読者・自治体問題研究所会員のみなさまへ
 どこの世界でも物価の値上がり、住民と自治誌の値上げが、今後の自治研運動にどうつながるか、会員拡大が望めない情勢の中大変厳しい世の中、早く岸田内閣打倒です。
BOOK REVIEW
ローカル
・ネットワーク
Jつうしん

自治の風─広島から 第1回 原爆「黒い雨」被害者を支援する活動について 牧野一見
広島から6回にわたって掲載されます。期待してくださいね。
編集後記
 

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