広島自治体問題研究所
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理事長退任のあいさつ
  田中健吾専修大学教授

 (2022/06/11)
  メッセージ
 
 新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあるように見えます。私の職場である大学でも、学生の皆さんも教職員もマスクを着けていますが、9割の講義は対面となりました。様々な場面でも、新型コロナ禍前の日常に戻りつつあることは実感できます。
その戻ってきた日常は、人間が人間らしく生きていける日常であるかについて疑問に思うことが少なくありません。私がいま住んでいる首都圏では、JRや私鉄での人身事故はまだまだあります。今週でいえば、私が通勤で使用している私鉄でも月曜日に人身事故がありました。東京都庁前では食料品の無料配布はいまも行われています。駅では着の身着のままで座り込んでいる高齢者の方も見かけます。働くこと、食べること、住む場所といった、生きていくために最も大切な部分が、日本社会ではいまもって保障されていないようです。新型コロナ禍でこれが深刻化しているように感じます。そして、以上のような日常であることが、取り立てて報道もされず、また、話題にも上らず、あたりまえのようになっているのが怖い気がしています。にもかかわらず、首都圏は不動産バブルといわれています。
ところで、ロシアによる一方的なウクライナ侵攻はいまなお続いていますが、これを契機として、台湾有事が声高に叫ばれ、改憲、憲法9条改正、日本での核兵器配備を求める声がいろいろなところから聞こえるようになりました。岸田首相は北大西洋条約機構という集団防衛機構(この機構の中心はヨーロッパの連合軍です)の首脳会議に出席するようです。6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では特に明示されませんでしたが、いわゆる骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2022 について)では、「NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた」ことに触れたのち、「新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」ことが明記されています。
「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、生活困窮については「長引くコロナ禍により、貧困を抱える世帯の生活が厳しくなるとともに、孤独・孤立の問題が深刻な社会問題となっている。困難を抱える方々と行政の橋渡しをするNPOは重要であり、孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援する」といいます。この叙述からすると国が自ら支援するのではないように思えます。 骨太の方針では、子供の貧困に触れるだけで、しかも、「こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、こども食堂のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する」のみです。生存権保障にかかわる部分は、もしかすると、DX、Aiを含む成長戦略で改善するということかもしれませんが、アベノミクスの三本の矢のうち成長戦略に関する部分は放たれないままでした。
2022年度自治体問題研究所定期総会でも確認されたことですが、いまこそ、憲法を暮らしの中に生かすための取り組みが大切になっていると思います。参院選の争点はここにあるはずです。広島には、以上の問題を含めた地域が抱える様々な問題に取り組み、憲法を暮らしの中に生かす、ということを実践している会員の方々がいます。広島自治研は、会員方々の地道な活動を支えていくことが求められているのだと思います。
 
                         2022年6月11日
              広島自治体問題研究所 理事長 山田 健吾
 

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