広島自治体問題研究所
  広島自治体問題研究所

お問い合せ  

 アクセス

 
戻る  一覧

広島市政白書づくりNO3
自治が育つ 学びと協働 広島市政白書に望む
 

 (2018/04/12)
 
  私は、2018年3月17日、「自治が育つ 学びと協働を考える」シンポに参加して、改めて広島市政白書づくりに関して、考えさせられ、このことについて報告します。
地方自治との歴史と今日
地方自治の歴史をみると、明治政府は、国政遂行のための重要な制度として位置づけていたようですが、戦時体制づくりが進められることにより中央集権的体制へと強化されてしまい、赤紙の発行を行う組織になってしまいました。
このようなことを防ぐために、戦後の民主憲法は「地方自治の本旨」を謳い、その地域に暮らす住民の幸せを実現する仕組みとしての自治、国家から独立した「地方自治権」が確立されたのです。
しかし、今日の地方自治体の状況は、革新自治体の確立や機関委任事務の廃止などで、地方分権の動きが高まりはしましたが、平成の市町村大合併や、地方自治法の改正で、国と県・市町村の役割の規定、地方交付税の算出計算の変更など、全体的に憲法の示す理念に基づく地方自治が発展しているとは言えない状況です。
しかも、安倍内閣の暴走にみられるように、富裕層の経済優先・軍事産業振興・格差社会の進展などで、住民が地域づくりの主体者として、自覚的に自らの生活課題や地域課題の解決を図っていこうという余裕がない社会風潮となり、真の住民自治の発展は期待できないのではないかと私は思ってしまいました。
このような時代の中で、住民自治を守り育てることが、地方自治発展には必要だと言われても、言葉ではわかっていても、住民の中には浸透しておらず、具体的にどのように進めるのか経験がないのです。
民主的自治体労働者論初期のころ、住民自治の育成が重要であり、実践することを自治体労働組合運動の柱として重ねてきましたが、それから云10年経ち、今、多くの自治体の職員数はぎりぎり一杯となり、自治体労働者は、パソコンの前から離れられない、隣と話ことなど出来ない状態が続いているとよく聞きます。このような全国の自治体の状況の中で、阿智村ではどのように住民自治の行政が行われているのでしょうか。
 
阿智村での住民自治の取り組み
 シンポジュームの中で、村の保健婦職員である小林さんから、阿智村の職員は、住民との懇談を楽しみにしている、積極的に現場に出ていると語られました。
阿智村では、公務員の採用時に、自治体職員として憲法の宣誓を行いますが、その時には村の全職員が集まり、一緒に聞きいり、憲法の意義を感じているそうです。また職場は、掃除、男女の差別はなく民主的な環境で、職員は地域を担当することで、住民との交流も持ち、村民にいろいろな説明会を開くなど、住民自治発展に直接職員がかかわることが組織的に確立しているようです。
このことは、阿智村で、前村長、岡庭一雄氏(1942年、長野県生まれ。1961年、阿智村役場に就職。1997年12月退職。1998年2月村長に就任。2014年1月勇退)が、「住民自治を行う村を作ろうと、行政の側として、「住民要望をたんに取り入れるのではなく、住民とともに考えながら必要な情報は常に提供し、住民からの提案を待ち、政策化する。事業計画等の計画、実施にあたって住民同士での協議や、決定を重視し、行政の都合でものを決めない」対応を重ねることで、住民自身に主体者としての自覚を高めてもらおうと考えて行政を進めてきたからなのです。
そして住民主体の行政を作る為に、行政情報の共有化、住民要望は直接住民が行う、議事機関として住民に代わって十分な論議を行い、議決したことについては十分な説明責任を議員全員が果たす、予算編成に住民の参画を保証する、住民自治の実践主体として、地域自治組織、課題別組織、住民の自由な学習の保障、住民主体の形成を図る公民館の活動を活発化させるなどが、実施されてきました。
そうした活動の中で、阿智村の行政職員は、行政の専門家として積極的に住民要望の質的な向上や効率的な運営等をともに考え、実践する、住民自治の否定や住民自治阻害をするものを許さず、住民自治を守る役割を担える職員となっているのです。
 
公務員となって
なぜ自治体労働者となったのか、今日の経済環境で、一番安定した職場だから、自分が住んでいる町だから、住みよい街にしていきたい。などの答えが出てきます。しかし、今の若い人からは、自分の専門知識を生かしていく、官僚としてトップになり自分の思うまちづくりをしていきたい、など個人の願望を先頭にしたものかもしれません。しかし、本来の自治体公務員は、憲法でも示されているように、全体の奉仕者として、憲法を尊守する制約役割があります。
公務という立場で、全国の情報をふんだんに取り込むことが可能であり、国民の生活を潜在化させ、国民に奉仕する改革を実施する役割を持っています。しかし、時代は変わり、新自由主義の社会になり、成果主義政策の進行により、市町村間競争を強いる政策により、自治を育てる以上に地方自治の解体が進んできました。戦争法の制定など、国家総動員ともなれば、国民を集約する立場におかれてしまいます。一方、国民からは公務員批判の声を聞くようにもなっています。
国民生活の貧困格差の増大は目をみはるばかりになっており、国民の怒りも大きくなっていつ爆発するかもしれません。安倍暴走内閣による戦争準備の社会づくりを、このまま進めていいのでしょうか。
このような社会に対して、私たち公務員は何ができるのか。日々の仕事の中から探り出し、市民の生活の向上を図り、平和な毎日を作るのが私たちの仕事ではないでしょうか。
現場で市民とつながるのは、個々の私たち職員です、その時どう市民の声が耳に入ったのか、職場の仲間や組合活動を通じて、市民の声を大切にすることが大切ではないでしょうか。
 
広島市政白書づくり
 広島市職員労働組合職員のみなさんは、今回で広島市政白書づくりを11回を迎えています。
現業の職員さんはある程度市民生活が見え、意識を持てるようですが、本庁の職員さんに至っては、とんでもない、住民の顔を見るより、国の要求にこたえることばかりではないでしょうか。広島市職労が自治研活動で、広島市政白書に自分の仕事分野の批判が記載されたことを、自分が批判されたと、いやだと組合をやめる動きがあったそうです。
自治体の職員の仕事は、首長の政策により色分けされるもので、貴方が本来の市民のために仕事を行うという意欲から大きく離れていることもあります。
私たちが市政白書を作る時、日常の仕事について、一旦立ち止まり、その仕事が市民生活に対しどのような影響を及ぼしているのか、批評して、書いていくことが大切です。市民に届ける活動は広島市職員労働組合の役割としてあるという点、組織として行っていることなのです。公務労働者の仕事にはこのような、首長の政策と市民の政策との矛盾が二面性として掴むことが、今、自治体労働者にとって大切なことではないでしょうか。
 一地方自治体の職員として、今の首長の指示により仕事を行うことは、給与の元ですが、労働者として、自分の仕事内容に対する評価を行い、市民生活への影響を推し量り、改善することを提案できるのは、民主的な公務員労働組合職員の誇りであり、市民への働き掛けは、あなたの公務員としての地域との連携できる資産ではないでしょうか。
 このような活動を行っているのは、全国的にも少ないのです。
おわりに
今回の白書づくりは、新たな組織での運営が行われています。来年の広島市長選挙・市議会議員選挙にむけて、10月発行をめざしています。この間さまざまな取り組みがあることでしょうが、2018年から2019年に向けて、市民生活の向上をどう考えるか、市民のみなさんに問うことができるよう頑張りましょう。
                                                 広島自治体問題研究所事務局員 三木茂夫
参照:「自治が育つ 学びと協働 南信州・阿智村」自治体研究社発行
   :「住民と自治」2018.4月号 書評 岡田知弘京大教授 P30
 
 
DL:56.pdf

(書評 岡田先生.pdf)
2653687バイト
DL:56.pdf

(阿智村・チラシ(6).pdf)
778498バイト

戻る  

連絡先 〒730-0051 広島市中区大手町5丁目16−18    

Tel: 082(241)1713 Fax: 082(298)2304  E-mail: hjitiken@urban.ne.jp