広島自治体問題研究所
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広島県民の「命の水」のゆくへ
V.災害時の水道復旧・水道料金値上げの心配はないのか

 (2020/04/01)
 
広島県企業局ホームページより
広島県営水道の送水のあり方基本計画
 広島県では水道災害として、2005年8月25日に発生した送水トンネルの崩落事故後、「広島県営水道の送水のあり方基本計画」:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kigyo/1237425707596.htmlを作成し,呉市民,江田島市民の生活用水と企業の生産活動に必要な工業用水の送水停止という過去に経験したことのない大規模な断水被害をもたらした。として、(p7参照)送水ルートのループ化などのライフライン機能の強化,水道施設のリフレッシュ事業や耐震化事業,さらには管路更新事業などの施策を,新たな対策の必要性を掲げていました。
 また、この計画書には、ア、本県の水道事業の現状及び特徴を掲げ、この特徴に応じた維持管理、危機管理が必要であるとか、イ、危機管理への取り組み状況では、事故時における送水ルートの確保双方向からの実施や、老朽管路への対応や水道施設の更新などについてもそれぞれ計画を策定し、整備を進めるとしていました。
 これらは、表2-2--2危機管理への取り組み状況(p8参照)、表2-2-3想定される事故と対応状況等が施設(p8参照)ごとに明確化されていました。
 また(2)課題等ではア、現状施設における水運用や市町自己水源によるバックアップ水量の確保、イ、現状を踏まえたバックアップ施設の整備、ウ、受水市町との連携等課題を明確にしていました。
 しかし、住民の声を聴く体制には記述していませんでした。
 これらの計画を無視して、2012年9月に水道事業体である公営企業「広島県企業局」と水・環境の総合事業会社「水ing」の共同出資・PPPづくりにまい進してきたのです。
西日本豪雨災害
 2018年7月の西日本豪雨災害を振り返ってみましょう。
この被害状況は、全国と比較しながら見るために、2019年1月9日内閣府発表の「平成30年7月豪雨による被害状況等について」: http://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon7/pdf/310109_1700_h30typhoon7_01.pdfの文書から見ると(P10参照)、15市町、205,332世帯で7月7日から8月9日まで最大1か月間の給水支援を受けた生活が起きています。また、影響範囲の調査から市町全域に被害が及んだところと、個別地区として挙げられた数は、全市町影響3市町,21地区が上げられます。
 この報告書では、広島県企業局の送水トンネル開閉ゲート損傷、広島県企業局本郷取水場の河川浸水被害による配水停止などが記載されています。このことで大きな範囲での給水区域を持つ広島県の特徴であり、水道事業に対する広島県の責任が大きいことが分かります。
 一方水道管破損での小さな地域での災害もあり、広島県から市町災害対応の支援が求められています。今回の災害被害の復旧に対し、(公社)日本水道協会を通じた災害復旧支援や、自治体間の応援協定等に基づく支援も報じられています。
 ではこの間、広島県企業局の指定管理会社「株式会社水みらい広島」はどのような活動を行ったのでしょうか。
 本郷浄水場は2015年から「水みらい広島」が指定管理している事業所で、尾道市、三原市、福山市の市民へ配水作業を停止せざるを得なかったのですが、その原因を河川堤防を越える河川水の流入であったという報告をしています。
民間経営の視線で水道施設の合理化ばかりを狙う芽では気が付かないのかもしれませんし、いくら河川水位が限界水準であるかを予測することは、営利判断ではできないと思います。河川の水位が河床に砂で埋め尽くし低くなっていたためだろうとの推測が立つますが、技術を持って売り込んだ水みらい広島の技量が、このようなことに着目できなかったとは残念です。2018年豪雨災害時のこの会社の活動状況は下記(アクセルp15参照)のとおりです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000565565.pdf
 また、指定管理会社に委託された施設が災害に合うと、他分野からの派遣が多くなり、企業局直営管理の時は、災害復旧に対する決断は早期に出されたものでした。また今後の復旧に関しても、財政的裏付けが必要となることなど、指定管理者として計り知れない時間が必要とされるのです。わたしたちは、命の水に関する復旧はすぐさまできる体制が必要であり、その被害者は県民だということを抑え、企業局直営復帰が望ましいと思います。
 一方呉市や三原市、江田島市などから災害に対する感謝状が指定管理者会社に届いていますが、自治体としての管理責任を十分果たしてもらいたいものです。災害体制時に地域に密着した姿勢を取るためにも、管理運営方針を市民とともに作り上げておくことが必要であり、施設の維持管理状況などを常に周知する心かけるが大切です。
千葉県の水道
  千葉県で2019年の台風15・19号での被害を聞くにつけ、電気・水道など生活関連の大きな被害状況が報告されていました。しかし、千葉県は総人口625万人の県であり、54市町村(37市16町1村)<令和元年5月1日現在>が存在し、水道用水供給体制も県水道局、市町が単独35市町村、市町の共同5か所、広域水道企業団6つと複雑です。
 また2019年の台風15・19号での被害の総括について、現在取りまとめ中であり、今後の水道ビジョンは、「「持続」・「安全」・「強靭」の観点から設定し、その実現に向けた取り組みを県及び各事業体において進めることとしています。」「理想像の実現には、各事業体のみの取り組みでは限界があることから、統合・広域連携を積極的に進める」と謳っています。
 県内6つの広域水道企業団には、議会があり参加市町からの意見を聞く体制がとられています。大きな県の体制であり、広島県との差を強く感じました。
水道料金問題
 市民にとって水道は、命と直結する大切な公共インフラですが、水道料金の値上げは大変大きな問題です。しかし水道法施行規則において、水道料金はおおむね3年を通じ財政の均衡を保つことができるように設定するものとされており、料金については、財政の均衡を保つことができるよう、定期的に見直すことが法令上定められていました。2018年改正水道法では、さらに長期的な収支の見通しを作成することを求め、それを勘案して、3年から5年ごとに料金を見直すこととされています。
 水道事業が、我が事であると日頃から認識されるならば、この費用負担について、躊躇するはずはないと思います。
 水道料金の成立ちは、水道施設の維持管理および計画的な更新等に必要な財源を、原則として水道料金により確保していく必要がある一方、将来の急激な水道料金の値上げを回避するために、将来的な投資見通しをもとに計画的な料金設定を促すためです。
 今日水道事業の民営化に向かっている広島県では、指定管理者から、民間運営の水道事業であり、利潤を求める事業と変質していく可能性が大きくなっているのです。                                
 広島県では、2018年4月から,県内の市町と「広島県水道広域連携協議会」を設置し,水道広域連携の具体化に向けた議論を重ね、「広島県における水道広域連携の進め方について」提言をまとめました。その結果水道料金について(p47参照)は、下記の表が報告されています。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/253/suidoukouikisusumekata.html
 
内閣府「平成30年7月豪雨による被害状況等について」p10
、「広島県営水道の送水のあり方基本計画」水道料金の変化p47

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