広島自治体問題研究所
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2021年10月号読者ノート

 (2021/09/27)
 
目次
◆直言 沖縄県の裁量的判断の正当性を認めた最高裁裁判官の反対意見 大田直史

 沖縄辺野古地域が持つサンゴの保護の取り組みが最高裁で戦われ、敗訴とはなったものの少数意見の、活用での行動が述べられています。一方での強引な強硬姿勢に対し、自然を相手にする戦いにも私たちは支援していきたいものです。
●連続企画●「新型コロナ」から日本の社会を考える 第16回 コロナ禍における学生の困難と支援の課題 小林雅之
 高等教育を受けようとする学生に就学支援制度があるということが、当たり前ではなく周知されていない、その制度の平等性に多いに問題があるなど、コロナ禍になって改めて明らかになっています。大学に入ればアルバイトをせざるを得ないから、入ればアルバイトをする社会になっており、このアルバイトがコロナ禍で大きく様変わりしたようです。中退者がコロナ禍の前より減ったとは、支援制度の効用が出ているのですね。しかし、新たな学生の就学意欲を支える制度として、国はもっと学生支援を行ってもいいのではないでしょうか。授業料の半減、入学金の撤廃など・・
●特集● 長期化するコロナ禍と「セ─フティネット」の穴
  生活困窮者に対する「セーフティネット」がコロナ禍でどのような作業を及ぼしたか張り直しか、あり方の再検討か深めてみましょう。
「不平等ウイルス」による貧困パンデミック 吉永 純
 コロナ禍パンデミックの中で、貧困部門について、相談員の皆さんから見た問題点が8項目にわたってあげられています。新たな言葉として、女性の貧困―シーセッションと言い、この間女性の自死者数が、前年度比885人14.5%ととなっています。またこの間の生活保護の現状は、この制度に対する、忌避感情が強まっていること、未曽有の生活の危機に会っても、生活保護が最後のセーフティネットとしての役割が果たせずにいることが報告されています。平時からの給付制度の拡充と使いやすくしておくことが述べられ、大阪裁判所の2021年2月22日の判決の意義を広めていきたいものです。
住まいの困窮者の現実と保障の課題 佐藤和宏
 今回のコロナ禍で、今までの居住保障の理念の不確立が露になったと言っています。居住困難化は長期的トレンドの住宅不足の表れである、公営住宅の減少、家族依存の住宅から、持ち家制度への移行、これらが崩れ、ホームレス、ネットカフェの増加などを生んできました。これら低家賃借家の減少が、今回可視化されているのに過ぎないのです。もはや「安定」のトライアングルの綻びが明らかである以上、必要な理念は、雇用や家族の「安定」や持ち家政策に固執しない、一人ひとりの生存と尊厳を実現する居住保障を目指すことではないでしょうか。 
コロナ禍で浮き彫りになった非正規雇用の新たな課題 原田仁希
 コロナ禍で日本経済の脆弱性を露にしました。飲食業・宿泊業・イベント業などのサービス産業が特に被害を受け、シフト労働制の弊害が黒書としてまとめられています。シフト制労働とは、所定の労働時間がなく、週ごとや月ごとに労働時間が決定される働き方ですが、コロナ禍で、企業が休業や営業時間の短縮を強いられる中、シフト制労働者は、シフトが全くなくなったり、大幅にシフト削減されたりしました。このシフトカットについて企業は休業手当を支払わなかったのです。家族内の労働分配が、多就業家族世帯という型で、収入源を複数持たないと生活できない、それくらい低賃金が広がっていることが明らかになりました。これらの人々への援助も行われていますが、周知度が低いのです。長年続く新自由主義社会が雇用の流動化や不安低下、そして低賃金化をもたらし、働く貧困層を大量に生み出していたところに、コロナがとどめを刺した、と理解できます。
対立でなく連帯を─女性が心身ともに自立するための互助 松元千枝
 相談会開催のテクニックとして、女性を対象とする時の大切なことが述べられています。UNでの報告で、3人に1人の女性がが暴力の被害にあっていると調査報告を出し、「影のパンデミック」として告発しているのです。また女性のケアは誰がするのかと根本的な問いかけがされ、雇用だけでなく、家庭内でも調整弁としてされていると告発しています。このような女性との懇談で、最も必要なことは当事者が委縮せず安心して話ができるよう、「価値判断をしない」「相談者の意見を尊重する」などがスタッフとして重要だとしています。一方相談する場としての役所は、窓口職員の雇用の安定や勤務の見直しが必要ではないかと問うています。制度情報を届けるには、その制度を必要とする人ほど、制度にたどり着くまでの障壁が厚いといった逆転減少があることに注意が必要です。
困窮者への貸付支援の現実と改革課題 角崎洋平
 コロナ禍で、生活困窮者に対する支援制度として、生活福祉資金貸付と特例貸付が、この間五月雨式に制度延長され、緊急小口資金で、約72万件、総合支援資金で約35万件に上り過去最高の貸付金額になっています。しかし、この脆弱な実施体制の下で、この業務に携わった職員の人の悩みが出ています。この貸付には、償還免除されない世帯もかなり多く残っており、これらの人の生活の支援が、償還期間10年間あり、これに沿う体制が確立していないのです。そもそも貸し付けは、将来返済する見込みが十分ある場合に実施されるべき支援です。が、貸付に適さない世帯にあっては、償還免除の検討も行わなければ、立ち直れないことが生まれる場合もあるのです。生活保護の柔軟運用を、「入りやすく出やすい」制度にしていきたいものです。
「断らない相談支援」が育む連携体制─座間市生活困窮者自立支援事業の実践 林 星一」
 生活困窮者とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる恐れのあるもの です。この人たちとの接点を築く過程で、庁内連携体制と「つなぐシート」を生み出したのです。
 アウトリーチ(Outreach)は直訳すると、「外に手を伸ばす」ことを意味します。 福祉分野では、「支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し、行政や支援機関などが積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセス」のことを言います。
 生活保護者と決定する前に、その人の様々なケースをまずはよく聞くことから「相談は断らない」と決め、出来るだけ早く相談者を窓口につながること、つながった相談を受け止めることを優先に考え、相談現場で見えてきたことを次の展開に生かそうと考えるのです。行政や制度だけでは解決できない課題について、地域の方々と連携をしながら解決を模索し、ともに成功(失敗)体験を共有することが地域連携の構築につながっていくと。「つなぐシート」は、職員が相談者の同意のもとで相談内容を記載し必要な行政サービスに「つなぐ」ためのシートです。座間市のこのような取り組みと、行政として、@生活不安に関する相談の受け皿A多岐に及ぶ瀬策を包括的に市民に届けるハブB相談現場で気づいた課題から自治体独自の政策形成の課題を柱にしているとは感心しました。

◆『住民と自治』創刊700号に寄せてB
ジャーナリストの基本を胸に刻んだ第400号記念の交流会で 池上洋通
住民自治を支える自治体労働者の姿に期待 照井 健
58年という歴史に感動 原 千鶴
私と全国の仲間のつなぎ手 山崎 勇
第63回自治体学校を終えて
●連載●
人つながるG 人が集まり、人がつながる─ある蕎麦屋の話─ 栗原洋一
シリーズ 地域発信 旅と暮らし 第1回 未知なる旅 八須友磨

 八須さんの新卒1年8か月後の旅立ちの話が、はじまりました。どんなことかと思えば、大自然に一人身をおき、それにまつわる人とのはなしです。これが今の社会すんなりいかないのが実情です。アラスカに行く前の大きな出来事化、東京から青森まで歩いていくとは。若さゆえか。
検証 津久井やまゆり園事件を人権の視点から考える 第2回 人権保障の歴史・意義と人権のにない手 井上英夫
 人権を視ない優生思想の起こした殺人事件に対し、私たちは、人権について、再度歴史から保障の意味、理念の具体化としての社会保障・社会福祉の原則、「人権の担い手」の使命と責務を改めて考えて行きましょう。世界大戦が悲惨な結果を生まれ、そこから人権ということが始まったと言います。そして、日本国憲法はそれを具体的にした文章であり、70数年たった今でも、その内容は発展させることができる可能な文章になっていると。最近「ケア労働」者が「人権の担い手」として浮かび上がっています。ケアということが、このような「担い手」でなければ理由が8項目にわたって挙げられ、なすことが5項目にわたって記載されています。すべての人は、人間とは何かを問い続けるものだと言います。
くらしと自治と憲法と 第5回 憲法25条 生存権条項─コロナ禍における生存危機と医療を受ける権利 伊藤周平
 コロナ禍で、日本はどう変わったのか、社会保障の制度の脆弱さがもろに出ているにもかかわらず、時の政府は、「まずは自分でやってみる。そうした国民の創意工夫を大事にしながら、家族や地域で互いに支えあう。そして、最後は国が守ってくれる」と言います。支えあえない地域・家族関係がつがないからこそ、社会保障の仕組みが必要であり、国や自治体には、私たちが払っている税金を使って社会保障の仕組みを整える責任があるのです。このことを抑え政府の言葉を見ると、共助・公助という広辞苑にもない意味のないつくり言葉が飾り立てているのです。病院へ行かず自宅待機だとは、コロナ患者は放置することを政府が言ったのです。最早、この政府は機能していないのです。
NEWS 横浜は燃えた─横浜市長選挙圧勝をもたらしたもの 岡田 尚
   横浜の市長選の前段からのカジノ住民投票闘争からの市民の戦いにこの市長選挙が結論を出したということですね。菅首相の地元での戦いで、きれいな結論を出して、これからの戦いが見えてきます。20万の署名が力になったと報告されています。
Jつうしん
自治の風─信州から 第6回(最終回) 学校と地域をつなぐ環境教育支援の輪─中信地区環境教育ネットワーク─ 傘木宏夫

 民間の活動で、役所としてわからないのが、コーディネーターの存在です。物事のつなぎを行うのは役所では、公務員が段取りを尽くしているので、その価値を見出せないのです。10年の長期にわたる活動を真から育て上げた人の言葉ですね。これからの環境問題の取り上げ方が、新たな活動に育っていかなければ、地球が滅びます。かんばってください。
編集後記
 

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